戦後を生きた記憶と記録 酒匂小1期生が発刊 小田原市

小学6年時の金時山登山=大野正夫さん提供

 1947年の教育改革により、校名が現在の酒匂小学校となってから初めて入学した1期生らが、70年の時を越えて一致団結。それぞれの当時の思い出を綴った記念誌『戦後の混乱期入学の生徒と先生の足跡』が完成した。

 作成のきっかけは2014年、かつて酒匂小学校で教鞭をとっていた児童文学作家・増田昭一さんの著書がドラマ化されたこと。戦時中に増田さんが滞在先の満州で見た孤児の様子を描いたもので、放映後、60年ぶりに果たした恩師との再会に刺激を受けた1期生の大野正夫さんは、「戦後の混乱期を私たちがどのように生き抜いたかを書き残したい」と思い立った。

 記念誌は、同級生や担任の先生から集めた原稿をまとめた合作。単なる作文集ではなく、貧しくも逞しく生きた子どもたちの様子を後世に伝える「戦中・戦後史」として、流行していた遊びや地域の移り変わり、社会情勢などのエピソードも織り交ぜた。

 名誉教授として高知大学に勤務する大野さんは、地元・小田原での取りまとめ役を学年同窓会会長の塩海洋介さんに依頼。昨年6月に開催された同窓会で参加者に企画を発表し、執筆者への依頼や資料集めを進めてきた。

貧しくも逞しく

 鼻をつまむほど臭かった学校給食の脱脂粉乳、食糧難で空腹のあまり田んぼで捕まえて食べたアメリカザリガニ、浜辺での石投げ合戦、紅梅キャラメルを買って集めたプロ野球選手のブロマイド――。140ページから成る記念誌からは、戦後まもない混乱期でも力強く溌剌として生きた子どもたちの様子が伝わる。

 執筆者に課せられたノルマは原稿用紙10枚分で、「70年前のことなんて覚えていないと思ったけれど、書き始めると次々と当時のことが頭に浮かんできて楽しかった」と塩海さん。今回の企画を通じて旧友との交流も深まり、飲み会も増えた。記念誌には同級生から集まった写真も数多く掲載され、大野さんは「戦後の混乱期の子どもの様子を描いた貴重な資料になる」と完成を喜ぶ。4月には「記念誌刊行の会」が企画され、60数年ぶりに学年の全3クラスが集う予定だ。

 自費出版のため有料(1500円)だが、購入も可能。希望者は塩海さん【電話】090・2453・0112へ。

当時の写真を数多く掲載した一冊

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