病院機構理事長を解任 県立がんセンター医師退職問題

 県立がんセンター(横浜市旭区)の医師退職問題を巡り、黒岩祐治知事は7日、県立病院機構の土屋了介理事長を解任した。独断による病院長更迭で混乱を招くなど「公共性の高い病院機構の理事長の任に適さない言動が数々あった」と指摘、聴聞での反論も解任理由を覆すには不十分との認識を示した。一方の土屋氏は「結論ありきの出来レースに強い憤りを覚える」と反発、法的手段に打って出ると明言した。

 昨年12月に表面化し重粒子線治療の診療継続が危ぶまれる事態に陥った内部抗争は、トップ解任で一定の節目を迎えた。ただ、今後は戦いの場を移して新たな局面に突入する見通しで、黒岩県政の懸案事項は当面続きそうだ。

 解任決定後、県庁で取材に応じた知事は「大変尊敬し頭を下げてお迎えした方。こんな形で解任するとは夢にも思っていなかったが、県民の命を守るためにはやむを得ない決断だった」と説明。任命責任については、「重く感じている。立派な病院に生まれ変わらせることで責任を果たしていきたい」と述べた。

 次期理事長に関しては「つらい経験をバネに、素晴らしい病院をつくる使命を担える人材を探している」とし、4月1日から新体制で臨みたいと強調。土屋氏が法的措置を講じた場合は「粛々と対応していく」との考えを示した。

 土屋氏の解任理由は、内部検討せずに病院長を更迭し異動通知を貼り出して病院内を騒然とさせた−など5項目を挙げ、機構全体を混乱させ診療継続に支障を来しかねない状況に陥らせたと指摘。「高度専門医療を安定供給する公共性の高い機構の理事長として十分な資質を有していない」とし、地方独立行政法人法の不適格事項に該当すると結論付けた。土屋氏の反論には、「解任理由を覆すだけの意味があるとは受け取られず、総合的に判断した」(知事)としている。

 これに対し、土屋氏は「強い憤りを覚える。私は一つも間違ったことはやっておらず、患者の安全を第一に考えていた。弁護士と相談して法的手続きを取りたい」とコメント。知事による独法に対する違法介入などを指摘し、処分取り消しを求める意向を示している。

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