【豊田スチールセンター設立50周年、今後の展望】〈斉藤尚治社長〉「自動車進化」への対応力強化 「創業の精神忘れず、機能に磨き」

 豊田通商、トヨタ自動車が出資する国内の鋼板総合物流・加工拠点である豊田スチールセンター(本社・愛知県東海市)は、きょう8日に設立50周年の大きな節目を迎えた。自動車用鋼板の品質向上とデリバリーの安定化を目指して設立した当時の魂は、現在も変わらない。一方、目前に迫る自動車産業の大きな変化に対し、加工・物流拠点として柔軟な対応力を強化するための戦略投資、人材育成を着々と進めている。斉藤尚治社長に、節目への思いと今後の展望などを聞いた。(片岡 徹)

――設立50周年の節目を迎えました。

 「自動車メーカーをはじめ、部品メーカー・鉄鋼メーカーの皆様に支えられ、一体となって『総合鉄鋼物流事業』を50年間たゆみなく展開してきた。当社を支えた諸先輩には心から感謝し、敬意を表したい。また、今後も創業時の精神を忘れず、機能を磨きたい」

豊田スチールセンター・斉藤社長

――足元の事業環境は。

 「加工事業は、フル稼働の加工ラインが多い。足元では月間8万トン程度の加工量で推移している。特に1~3月の繁忙期においては、4勤2休制を採用し、堅調な需要に対応している」

――製造業全般では、人手不足がクローズアップされているが。

 「確かに、人手不足は憂慮すべき問題。足元、人材確保は問題なくできている。技能職採用では、先輩の方々が過去から精力的に採用に力を入れてきた。その成果が出て、人材確保ができている。定着率もよい。また、ベトナムからの実習生も戦力になっている」

――現場の業務効率化、生産性向上への取り組みは。

 「長時間のライン停止がないように、IoTやAIを活用した予防保全対策を推進したい。熱・振動・音の異常を察知するセンサー・システムを導入し、設備トラブルを事前に予測する体制を構築したい」

――安全や品質などでの取り組み課題は。

 「安全・コンプライアンス・品質・環境の四つは、事業戦略を考える以前の会社としての基本部分であり、決して譲れない、妥協しない取り組み。これまでもそれらを最優先し対策を講じており、今後も手を抜かずにやっていく」

――物流業などでも人手不足が深刻化し、さまざまな影響が出ているが。

 「当社では、出荷用のトラックだけで250台を確保し、それが日当たり約2・5回転する。物流機能の活性化と労災撲滅の観点から、荷の積み下ろし時の条件などをさらに明確化したい」

――今後、EV化の進展などで軽量化のための開発も進むだろうが、そうした変化の中での対応策は。

 「当社は、素材・加工・物流という三つの軸で成り立っている。そのうち素材としてはアルミなどへの対応がポイント。加工では、テーラード・ブランク、レーザブランクなどに磨きをかけることが大切。物流ではCVT(コンテナ・バンニング)をどう展開していくか、が大切だ」

――CVT、レーザブランクの最近の動向は。

 「レーザブランクラインは、フル稼働状態。補給部品や試作部品向けの加工が主体。お客様の金型レス、コイルから直接ブランキングするという効率のよさが評価されている。CVTは、お客様の海外での現地調達も順次進んでいることから、次の展開を考えたい」

――ハイテン鋼の加工比率も今後はさらに高まるのでは。

 「確かに、ハイテン鋼の号口化なども進み、120キロ鋼以上の超ハイテン鋼の加工比率も今後増えてきそう。加工現場としての最善を尽くすとともに、豊田通商本体と一体でハイテン鋼比率拡大に伴って生じる課題などを解決し、お客様のニーズに応えていきたい」

――今後進むとみられるコイルセンター業再編に関して、どう考えているか。

 「当社としては、お客様に選ばれる会社になることを常に意識することが大切と考えている。安心して継続的にご注文を頂ける会社になることだ」

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