感じる「熱」と「可能性」 元G村田修一が加わる栃木というチーム

栃木ゴールデンブレーブス・宮地克彦ヘッドコーチ【写真:山岡則夫】

村田修一の入団を発表したBC栃木

 村田修一。横浜、巨人で15年間プレーしNPB通算1865安打、360本塁打。07、08年には本塁打王まで獲得したスラッガーが入団するのは独立リーグの栃木ゴールデンブレーブス。露出こそ多くはないが、BCリーグに所属する栃木は熱のある、可能性を秘めた球団である。

「BCリーグ」(ベースボール・チャレンジ・リーグ/ルートインBCリーグ)は06年に設立され07年スタートした。現在は10チームで運営されているNPB傘下に属さない独立リーグ。資金から選手調達など、すべてをそれぞれのチームでまかなっている(ただしNPBの2、3軍との交流戦等は頻繁に行われている)。

 発足当時は各チーム、特定の本拠地を設けず所属各県内を巡回して試合を行っていた。しかし徐々にではあるが特定の本拠地を定める球団も現れ始めている。BCリーグは「ホーム」の存在に対しても試行錯誤途中だ。

 現在、栃木も特定の本拠地を定めていない。17年は栃木県内の宇都宮市、栃木市、小山市、佐野市を使用したが、やはり多少の温度差は存在する。様々な理由から県北・中央と県南の2か所に球団事務所を構えている事実もある。

 例えば、全国的に「餃子」で有名な宇都宮市はどちらかといえば高校野球に熱心。作新学院は“怪物”江川卓(元巨人)らを輩出し、同校が2016年に夏の全国制覇を果したのも記憶に新しい。他にも有名校は存在するが、他競技も含め、部活の盛り上がりが宇都宮市は大きいという。そんな中でBCの栃木に対して一際、熱心なのが小山市である。

栃木は小山市で15試合を開催する【写真:山岡則夫】

宮地ヘッドコーチ「栃木の恵まれた環境をどう活かすか」

 17年、栃木は小山市で15試合を開催(うちNPB3軍との交流戦1試合)。実質の本拠地のような存在である。それに応え行政側も立ち上がった。老朽化した小山運動公園野球場の改修にいち早く取り組む姿勢もみせた。照明灯を新規に設置し、スコアボードの電光掲示化などにも取りかかる。また廃校となったかつての小学校を球団が練習場として使用。校庭はプロレベルがしっかり練習できるほどまでに整備され、体育館は室内練習場となっている。

 ヘッドコーチを務めるのは元西武などで活躍、05年にはベストナインも獲得した宮地克彦だ。

「独立なので施設など恵まれていないのは最初からわかっている。でもそんな中でうちは本当に恵まれていると思う。こんな環境の中でしっかり野球に打ち込めないならうまくならない」

「BCはルールで3年しかプレーできない。独立もプロだけど、NPBというプロとの分岐点。その先、野球を続けた方が良いのか、選手自身に気付かせるのも我々の仕事だと思う。そのために栃木の恵まれた環境をどう活かすか」

 NPBに選手を輩出するのが最大の目標だが、勝利も求められる。非常に難しい役割を任せられたのはホークスで外野手としてプレーした初代監督・辻武史。

高みを目指そうとしている栃木の野球

「環境などをNPBと比べるのは間違っている。そんな中でもうちは周囲が本当にサポートしてくれる。そういう方々のためにもやはり結果は残したい」

「勝利と育成。簡単に言うけど勉強の毎日です。やはり選手は十人十色。彼らの個性をしっかり活かしてあげられるように僕も日々勉強です。少しでも可能性を伸ばせてあげられたら……」

 BCリーグ加盟初年度の17年は、東地区において前期7勝28敗、後期12勝20敗と満足な結果は残せなかった。しかし大きな期待、そして課題提起もおこなってくれたのも事実。シーズン最終戦には最多となる1879人ものファンがスタンドに集まった。

 日本一の生産量を誇る「二条大麦」。世界遺産・日光東照宮の「陽明門」。そして風物詩である「雷」。それらをイメージしたチームカラー「ゴールド」は、まさに栃木、王者の色。チームが強くなり、1人でも多くのプロ選手が輩出できれば……。そこに新たに加わる実績十分なスラッガー村田修一。様々な試行錯誤をおこないながらも高みを目指そうとしている栃木の野球。彼らの「夏」はまだ始まったばかりだ。

山岡則夫●文 text by Norio Yamaoka
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。

(盆子原浩二 / Koji Bonkobara)

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