イチローは「マリナーズに何をもたらす?」 米記者分析「役割は大きくなる」

マリナーズへの復帰となったイチロー【写真:盆子原浩二】

6年ぶり復帰のイチロー、米記者は「金字塔打ち立てるチャンス」

 6年ぶりのマリナーズ復帰が決まったイチロー外野手。2001年から2012年途中まで在籍し、シアトルで数々の偉業を達成してきた“レジェンド“の復帰を選手たちも歓迎しているが、地元メディアからは賛否両論が噴出。獲得を評価する声だけでなく、44歳という年齢などを理由に否定的な意見もあった。

 では、イチローは実際に戦力として何をもたらすのか――。米メディアがそれぞれの見解を特集で伝えている。

 3年間所属したマーリンズでは、イチローは4番手外野手としてプレー。高い能力を持つ若手中心のチームの中で、試合への準備、野球に打ち込む姿勢など、グラウンド外でも大きな影響力を見せた。

 当然、控え外野手としても役割を果たし、外野の全ポジションでプレー。常に入念に準備し、コンディションの問題などで急遽欠場する選手が出ても、しっかりと埋めた。また、昨季はシーズン代打安打記録にあと1本と迫るなど、新境地も見せていた。

 ESPNは「44歳のイチロー・スズキはマリナーズに何をもたらすだろうか」と題して特集記事を掲載。「イチローがシアトルマリナーズで背番号51を身に着けてから5年以上が経過した。しかし報道によると、変わろうとしている。もちろん、この44歳は2012年と比べ、2018年でのマリナーズでの役割は大きくことなるだろう」として、ジェリー・クラスニック記者の考えを伝えている。

外野手に故障続出のマリナーズ、「短期的な修正といった類のもの」

 記事によると、同記者はイチローの現在の状態について「彼は素晴らしいコンディションを保っている。どんな役割も進んで受け入れるだろう」「身体的にほとんど変わっていないように思える。ストレッチや彼を信じられないほど適応させている他の取り組みはアメージングだ」と紹介。怪我人が出て外野手の補強が急務となったマリナーズが、イチローの獲得に動いた理由について「彼の復帰には郷愁的な利益も少しはあると思う。でも私は、短期的な修正といった類のものだと思う」と分析している。

 軽度の故障者が続出していたマリナーズは、ここにきてベン・ギャメルが腹斜筋の故障で4~6週間の離脱を強いられることになり、イチロー獲りに動いた。FA市場にはホセ・バティスタ、カルロス・ゴンザレス、メルキー・カブレラらレギュラークラスの外野手も残っているが、イチローの獲得が“最適”だったという。クラスニック記者は「故障も軽く、(マリナーズGMの)ジェリー・ディポトはおそらく大きな動きをする必要はないと感じているだろう」と指摘している。

 一方、イチローの現状に厳しい見方を示したのは米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」だ。

 同紙は「証明するものが何もない中で、イチロー・スズキはマリナーズに復帰する」との見出しで特集記事を掲載。近年、浮き沈みのあるシーズンを送ってきたことに触れつつ、「形勢を逆転させる彼のスピードは、20年に渡り、大いに席巻したものの、(昨年の)彼の成績には反映されなかった。そして並外れた守備能力は彼から離れていってしまったようであり、スポーツ・インフォ・ソリューションは彼の守備防御点をマイナス1と評価している」とレポート。「マリナーズがイチローの今シーズンに期待することに関して言えば、見通しは若干、厳しいものである」と伝えた。

NY紙がイチローに対して投げかけた“疑問”、「単なる一つの停留所なのか…」

 またイチローが日米で殿堂入りする初の選手となるであろうこと、再びプレーを見られることはファンにとって喜ばしいニュースであることなどを伝えつつ、「スズキはキャリアの終焉を目にしているとは認めていない。よってここで疑問となるのが、このシアトルへの帰還は彼の非常に長いキャリアを締めくくることを意図としているものなのか、それとも彼のジャーニーマンとしての道中における単なる一つの停留所なのかということである」と、ベテランの行く末に熱視線を送っている。

 現在、メジャー歴代22位の通算3080安打まで記録を伸ばしているイチロー。21位のキャップ・アンソン(3081安打)までは「1」。20位のデーブ・ウィンフィールドは3110安打、19位のアレックス・ロドリゲスは3115安打と、トップ20入りも近い。

 全盛期からの衰えを指摘する声が上がる一方、ESPNのクラスニック記者は「彼は金字塔を打ち立てるチャンスを得た」とも言及している。

 数々の偉業を達成したシアトルで、イチローは新たな伝説を作ることになるのか。再び古巣で存在感を放つことができれば、来季以降の契約にもつながっていくに違いない。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

© 株式会社Creative2