【MLB】イチローのマ軍復帰に米記者「嬉しくなった」「野球の仕方を教えてくれる」

マリナーズへの復帰となったイチロー【写真:Getty Images】

マリナーズと契約に「嬉しくなった」、シカゴ紙のコラムニストが綴る

 米18年目のシーズンを迎えるイチロー外野手のマリナーズ復帰が決まった。マーリンズからFAとなっていた44歳の6シーズンぶりの帰還にシアトルは盛り上がっているが、喜んでいるのはファンやチームメートだけではない。メジャーに大きな影響を与えた一人の“ベースボールプレーヤー”としてイチローに敬意を抱く人たちが、キャリア続行を歓迎している。

 イチロー復帰のニュースを受け、「44歳にして、イチロー・スズキはいまだ我々に野球の仕方を教えてくれる」とのタイトルで特集を掲載したのは地元紙「シカゴ・サンタイムズ」だ。コラムニストのリック・タレンダー記者は「44歳のイチロー・スズキがマリナーズと契約する、との報道を読んで私は嬉しくなった」と胸の内を綴っている。

 2001年にオリックスからマリナーズに移籍したイチロー。パワーヒッター全盛、しかも禁止薬物が蔓延していたと言われる時代のメジャーに新たな風を吹かせた。小柄でスリムな体ながら、バットでグラウンドのあらゆるところにボールを運び、ヒットを量産する。内野にボールが転がっても、圧倒的なスピードで一塁まで駆け抜け、強肩内野手の送球に“勝利”する。そして、ライトでは広大な守備範囲を誇り、「レーザービーム」送球で走者を刺す――。

 タレンダー記者も「猛禽のような選球眼を持つ左打者。イチローはボールをはたき、ピンボールのフリッパーから放たれたように一塁へと向かうスイングをする。時折、ボールがバットに当たる前に彼はすでに一塁へ向けてスタートを切っているかのように思えることがある。彼は非常に多くのゴロ安打を記録しており、内野手の怒りを掻き立てたに違いない」と、“唯一無二”の打撃スタイルを称賛。さらに、180センチ、79キロというサイズを紹介しつつ「現役選手の誰よりも多い安打(3080本)を記録している。天才であるイチローは、巨人たちがうろつき回るこの地における華奢な魔術師の役割を再び考えさせる」と記している。

「見かけによらないパワー」「外野からの送球は純然たるレーザー」

 しかも、イチローはスピード溢れる究極のアベレージヒッターというだけではない。試合前のフリー打撃では、軽々と柵越えを連発。オールスターのホームラン競争出場を望む声は根強い。記事では、メジャー通算117本塁打、現役2位の通算509盗塁というデータに触れつつ、「スピードと見かけによらないパワー。加えて外野からの送球は純然たるレーザーだ」と、パワーと強肩ぶりについても称えている。

 村上雅則氏が日本人初のメジャーリーガーとしてプレーし、野茂英雄氏がパイオニアとして切り拓いたメジャーへの道。ただ、MLB初の日本人野手として海を渡ったイチローを超える選手はいない。いや、もう出てこないかもしれない。

 タレンダー記者は、最近は日本だけでなく韓国からもメジャー挑戦者が出ていることに言及。「しかし、イチローは特に素晴らしい」として、10年連続オールスター選出、10年連続ゴールドグラブ賞獲得、10年連続200安打達成、12年連続20盗塁以上といった数々の偉業を紹介。そして、「彼のキャリアが日本で始まった際に、この国に来ていたらどうなったであろうか? オリックスで記録した1278安打をメジャー通算に加えると、計4358安打になる。ピート・ローズの4256安打よりも上だ」と、安打数が“世界一”であることも伝えている。

 メジャー歴代22位の通算3080安打を誇るイチローは、21位のキャップ・アンソン(3081安打)までは「1」、20位のデーブ・ウィンフィールド(3110安打)までは「30」、19位のアレックス・ロドリゲス(3115安打)までは「35」と迫っている。

 タレンダー記者は「忘れてはならないのは、終わりが近づいているものの、イチローは今年、この安打数を増やすことができるということだ」と期待を寄せる。メジャー史に名を刻む男の現役生活は、まだまだ終わらない。

(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2