【工場ルポ】〈引抜鋼管メーカーの旭鋼管工業子会社、移転拡張「旭鋼管九州」〉九州・中四国地域で拡販 車部品向け、長尺品加工能力強化

 引抜鋼管メーカー大手の旭鋼管工業(本社・埼玉県草加市、社長・若林毅氏)のグループ会社で鋼管・鋼材の切断・面取加工を手掛ける旭鋼管九州(大分県豊後高田市かなえ台5番2)は、九州・中四国地域で自動車向け部材の拡販のため、12年5月に設立された。昨年には今後の業容拡大をにらんで同市内の新興工業団地に拡張移転。長尺品加工力を強化することで、対応部材のバリエーションを増やしている。今後はさらに加工メニューを増強し、より付加価値をつけた部材供給体制を目指す。(後藤 隆博)

 旭鋼管九州は、九州・中国地方に集積する自動車部品メーカー向けをメーンに各種鋼管・鋼材の切断・面取り加工を行ってきた。操業から5年経ち、既存敷地の手狭感や町中立地による操業規制の問題解消、東日本地域の顧客と同水準の製品供給体制をコンセプトに拡張移転した。九州全域のほか、四国、岡山以西の中国地方などを商圏としている。

 大分北部工業団地内に敷地面積7987平方メートルを確保。建屋面積3245平方メートルの工場・事務所棟を設立した。敷地面積は、従来の1・5倍に拡充。従業員は26人で、社長は若林社長が兼務している。

 工場内の加工ラインは、大きく短尺品と長尺品に分かれている。短尺品は外径10~100ミリ・長さ10~125ミリ、長尺品は外径8~76ミリ・肉厚0・8~5ミリまで対応する。短尺品の加工は、100%旭鋼管工業の野木工場(栃木県下都賀郡野木町)で冷間引抜加工を行った素管、長尺品は支給材をそれぞれ加工する。

 短尺品の加工は旧工場時代から行っており、自動車の足回り部材が中心となる。一方の長尺ラインは工場移転後に新設。最長2メートルまでの鋼管加工が可能で、顧客からのニーズが多いマフラーやシートフレーム関連の部材加工がメーン。全ラインをそれぞれ長さや口径によって使い分け、切断機、両端加工機をライン化しており、切断から面取りまでをすべて一つのラインで行う。長・短尺加工ラインすべてに検長機をつけており、全数長さの測長をオンラインで行っている。

 足元の加工生産量は、現在一直体制で短尺品が月間150万個、長尺品で同18万本程度。生産能力はそれぞれ短尺品250万個、長尺品75万本で、短尺品の加工能力は、旧工場と比較してほぼ倍増となった。ユーザーからの堅調な需要に支えられ、来期(18年4月)からは短尺品ラインを2直体制に移行する。人員は管理職を含めて26人。新工場移転にあたって、現場で4人を新規採用した。

 目下の工場の課題は、旭鋼管九州単体での黒字化と現場スタッフの育成だ。

 現場スタッフ育成については、各工程の班長(工長)に積極的に若手を抜擢。現在4人いる工長のうち3人は20代で、各人に責任意識を持たせ、担当部署の改善努力などを促している。また、ラインによって繁忙と閑散の時期が異なるため、工場内で自分の持ち場以外の業務も行える多能工化も進めている。

 人員確保の観点から、ベトナムからの研修生を3人採用。現場では、ベトナム語の作業マニュアルも常備する。「今後の採用法についてはまだ手探りの状況だが、皆本当に真面目に日々業務に取り組んでくれている」(水越亮広工場長)。

 黒字化に向けては、安定生産・供給体制の構築が必須。また、現在の切断、開先加工から曲げ・プレス・切削など加工分野の増強も視野に入れ、付加価値をつけた部材供給体制の構築を目標に掲げる。ユーザーニーズに合わせた加工バリエーションの拡大、新規の部材供給先開拓も積極的に行っていく方針だ。

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