今回の戦いで見えた課題 ―アルガルベ杯順位決定戦ー

なでしこは順位決定戦としてカナダと対戦。今回も元なでしこジャパンの丸山桂里奈さんに語っていただきます!

恰好の相手カナダにどう臨むか

なでしこジャパンは、アルガルベ杯、グループリーグ、2勝1敗で、4位・5位決定戦に回った。対戦相手は、FIFAランキング5位強豪国のカナダとあって、なでしこジャパンの現在の実力を測ることができる、恰好の相手だ。

なでしこジャパンのスタメンは、グループリーグで、結果を出している、今のベストメンバーの組み合わせに近い。GK山下、DF鮫島、熊谷、市瀬、有吉、MF長谷川、阪口、隅田、中島、FW岩渕、菅澤。

デンマークに2-0で勝ったスタメンと、山下、隅田、菅澤以外は、連続スタメンとなる。ちなみに、なでしこリーグで3連覇を果たした、日テレベレーザの選手が、5名いる。今の女子の中でもベストメンバーかもしれない。

この日のポルトガルも、時折、断続的に強い雨が降り注ぐ。試合は、カナダが中盤で出足とボールへのよせを速くして、素早く連携を図り主導権を握る。

カナダは、フィジカルの強さ、リーチを活かした個人の力に加えて、近年更に高めている組織力をこの試合でも発揮する。

日本がドイツ杯で優勝して以来、世界の各国は日本の高い連携を研究して、組織力を備えている。カナダの動きは、複数人でボールへ早く寄せ、ボールを奪うとサイドの速い選手にボールを出すか、ベテランで、カナダの大黒柱のシンクレア選手のポストプレーを使う。シンクレア選手は日本にとても相性がよく、幾度となく日本のゴールを奪ってきた。私もU19のときから彼女のプレーを見てきたが、そのときから1人ずば抜けた技術、シュート力、シュートの正確さは抜群だった。

デンマーク戦の時のような日本の持ち前のパスワークは、この日のカナダの選手たちの連動した組織に通用しない。

前半20分、カナダは、左サイドでベッキーが、ペナルティーエリアに、ドリブルで進入し、パスを出したボールが、右サイドの中島選手の手に当たる。

一瞬、カバーしていた有吉選手のプレーも止まる。そのすきを見逃さず、ベッキーが右足で、角度のあるところから、ファーサイドに決めて、先制。

チャンスをしっかり物にするのも強みだ。

日本は、中央やや右から、中島選手がディフェンスラインの裏に抜け、ゴールキーパーと1対1になりそうになる好機を作ったが、カナダディフンダーのリーチのある足が伸びて惜しくもインターセプトされる。

カナダは、日本のクリアーボールをペナルティエリア外からシンクレア選手が、ダイレクトでシュートを打つ。ミスに助けられたが、十分に注意する必要がある。日本は、中盤のカナダの速くて強いプレスにあい、チャンスも殆ど作れないまま、前半、0-1で終了。

前半の課題をどう後半に改善できるか

後半、日本は、右サイドバックの有吉選手に代えて、清水を投入。

デンマーク戦で見せた、オーバーラップに期待したいところだ。

後半5分カナダは、ローレンス選手が、シンクレア選手の縦パスに、守備で自陣に戻った長谷川選手がボールを持った瞬間に、後ろからボールカットをされてしまい、ローレンス選手がそのままドリブルで中央に切り込む。

熊谷選手と山下選手のボールが流れ、一瞬お見合いしてしまった。そのボールを逃さず、スピードのあるローレンス選手が、左足でシュートを打ち、ゴール。カナダが2点目を挙げる。

長谷川選手の危機察知能力は見事なのだが、奪われたらいけないエリアで奪われてしまうのは失点に繫がってしまうので、特にドリブルを簡単に奪われるのは絶対してはいけないプレーだ。そして、お見合いの部分でもGKがしっかり声を出し、遠慮せずに前に出ないといけない。

日本の終盤

ボランチの阪口選手が、ゴール前に上がり、積極的に攻撃をしかける。阪口選手の上がりはチームを活気づけリズムを日本に引き寄せたかのように思えた。

アディショナルタイム、田中選手が、ドリブルをしかけて、PKを奪う。ペナルティーエリア付近はとにかくFWの選手にはドリブルで仕掛けてほしい。ペナルティーエリア内なら余計にドリブルで仕掛ければ、PKを誘い出したり、何か絶対ゴールに繋がるプレーになる。

PKは、田中選手が自ら右足で蹴るが、ボールはカナダーのゴールキーパーの左足に当たりクロスバーに弾かれ、得点にならなずに、そのまま試合終了。日本0-2カナダ。

日本のパスワークも、カナダの個のフィジカルとスピードに圧倒された。

日本は、プレスをかけカナダのパスコースを限定したいところだが、この試合の日本は動きが鈍い。動き出し、サポート、連携部分でなかなか良いところが見られなかったのが残念だった。その分カナダの出足の速さが目立った。

カナダは、日本の出足をスピード力を伴った連動した動きで封じ、組織力を十分に発揮させた試合だった。なでしこジャパンにとって、フィジカルが強く長いリーチとスピードを体感し、フランスW杯のアジア最終予選に向けて、世界のトップレベルがわかったことが救いとなった。

その中でも、小さなミスが重なり失点につながり、チャンスではしっかり決めれない部分を見ると、カナダは小さなミスも少なく、チャンスはしっかり決める。なかなか厳しい試合になったのかなと思う。全試合を通じて、出来たところは伸ばし、課題はしっかり個人としてもチームとしても改善していく必要がある。

また各個人でしっかりレベルアップし、なでしこジャパンに召集された際には、フルパワーで臨めることがチームとして成長していくことには重要だと思う。

引き続き、なでしこジャパンの応援をよろしくお願いします!

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