国民栄誉賞の記念品 「お2人にふさわしい品を」 中区の書道用品専門店が協力 横浜市中区・横浜市西区

 将棋で「永世七冠」を達成した羽生善治氏と、囲碁で2度目の七冠独占を果たした井山裕太氏に国民栄誉賞が授与され、同時に注目されたのが記念品として贈られた「書道の道具一式」。2人が棋士として色紙や扇子に揮毫(きごう)(筆で字を書くこと)する機会が多いことから選ばれたものだが、実はその一式のうち、筆2本と墨は、中区にある書道用品専門店「ゴールデン文具」が企画制作に協力し、納めた品だという。

 授与式の1カ月ほど前に同社に依頼があり、打ち合わせを重ねて贈る品の選定が行われた。筆は広島県の「熊野筆」で、筆づくりの名人として認められた伝統工芸士・中川聖峰氏の作品。極上の鼬(いたち)毛を使い、軸は入手困難で希少価値の高い煤竹(すすだけ)と、漆の曙塗りが選ばれた。

 煤竹は、藁葺き屋根の古民家の天井などからとれる竹で、100年以上の年月をかけて囲炉裏の煙で燻されることで自然についた独特の色合いが特徴。曙塗りは赤漆の上に黒漆を塗り、下の赤を一部研ぎだす技法だ。それぞれ「業界における長年の功労」や「闇夜に差し込む一筋の光(曙光)のような存在」と、偉業を成し遂げた2人に重ね合わせ、ふさわしい品を選んだという。墨は最高級の「油煙墨」で、2人が揮毫した座右の銘を刻した。

 今回の依頼について同社の平出揚治会長は「大変名誉なこと。他では簡単に手に入らないような特別な品を選定した。長くご愛用いただけたら」と話している。

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