FC琉球・倉林社長インタビュー!就任1年で観客とスポンサーを激増させた“秘訣”

Jリーグに敏腕社長がいると密かに話題だ。

  • スポンサー56社→130社(およそ2.3倍)
  • 観客動員数1561人→2508人(およそ1.6倍)
  • クラブ創設14年目で初のJ2ライセンス獲得
  • J1規格で駅隣接スタジアムの整備基本計画が公表。

これらはすべて1人の人物が、とあるJクラブの社長に就任してから1年目に発表された功績なのだから驚きである。

倉林啓士郎。

フットボールブランドsfidaを展開する株式会社イミオの代表取締役社長であり、明治安田生命J3リーグに所属するFC琉球の代表取締役社長も無償で兼任している。

前年比の観客動員数の伸び率はJリーグ全体で3位。

1位は新スタジアムがオープンした北九州、2位は昇格して初タイトルも獲得したセレッソ大阪だ。

しかし、FC琉球は新スタジアムの建設がまだしばらく先で昇格や優勝をしたわけでもない。

純粋にその経営手法で観客動員数やスポンサーを伸ばしたのだ。

この驚異的な数字はどのようにして達成されたのか?

今回はその経営手腕について倉林社長本人を直撃した。

インタビュアーは南米でサッカー指導者をしている平安山が務める。

フロント改革

――2017年は、sfidaがEAFF E-1サッカー選手権に公式試合球VAISを提供。さらに、FC琉球の観客動員&スポンサー数増加、J2ライセンス取得など、大活躍の一年でした。特に、2倍以上になったFC琉球のスポンサー数増加の理由は何なのでしょうか?

基本ですがまずは営業の強化があります。

FC琉球にはスポンサーをお願いする企業の営業リストがあり、このリスト自体はこれまでもあったものなのですが、充分には営業が行き届いていない部分がありました。

そこでまず昨年はじめに単純に専任の営業スタッフを2人から3人に増やし、今は4人まで増えていて、今後もまだまだ人材を探していきます。

また、私の就任時、FC琉球のフロントスタッフは自信がなく、「僕たちなんかにお金を出して貰うなんて…」という申し訳なさを感じている部分がありました。

そのため、スポンサーに提案するときも最初から必要以上に自分たちを安売りしてしまう習慣がありましたが、そこはしっかりと自信を持ち、そしてキチンと価値を提供するんだという方向へと意識を変えていきました。

2017年の就任時には時間がなく、すでにユニフォームスポンサーの広告料単価などは決まってしまっていたのですが、それでもそこからの取り組みでクラブ史上初めてユニフォームスポンサーがすべて埋まりました。

今年は広告料などの単価を上げた分、さらに価値を提供していく予定です。

――スポンサーにはFC琉球のどんな魅力を伝えたのでしょうか?

今までのFC琉球は、社長であったり誰か一人のものであるという印象があったのですが、全沖縄県民のためのチームであるということを伝えました。

スポンサーにしてもファンの方々にしても、沖縄のスポーツチームを応援したい気持ちがないわけではないのですが、ただよくチームの実態が分かっていないという方が多かったんですね。

そこで「誰が・どんな思いで・なぜ・FC琉球でやっているのか」を浸透させることを意識しました。

FC琉球が存在することの意義や、J2に昇格することで沖縄が得るもの。

沖縄県民の夢になりますよね。

そこに共感してくれる方々が協力してくれるようになり、さらに他の企業様もどんどん紹介していただけるようになりました。

奇策というより、「当たり前のことを当たり前にやる」を徹底したのがFC琉球での1年目でした。

2年目以降もぜひ注目してください。

※選手とともにファンへのビラ配りを行う倉林社長。

観客動員数増加の秘密

――FC琉球と言えば観客動員数の増加も顕著でした。

女性や子供も含めた幅広い層が、サッカーの試合自体はもちろん、それ以外の部分でも楽しめる要素を増やしました。

具体的にはスタジアムグルメを充実させたり、1つ1つの試合にパートナー企業についていただいてイベントをしたり、ハーフタイムショーの充実などです。

公式サポーターガールズである「Ryukyu Girls」という美女グループや、昨年誕生したばかりの公式マスコット、ジンベーニョも人気(※マスコット総選挙J3では1位)です。

ハーフタイムショーにはダンスグループ「琉球BOMBERZ」とジンベーニョがコラボダンスをしたり、世界大会でも金賞に輝いた地元西原高校マーチングバンド部に演奏していただきました。

また、メディア戦略にも取り組んだことで、メディア出演数が約3倍に増えたことは大きかったと思います。

――メディア戦略というと例えばどの様な取り組みでしょうか?確かにメディア出演やSNS発信にも変化がありました。

今までの体制だと専任の広報というのがいなくて、他の業務との兼業という形だったのですが、専任の広報を1人置くことにしました。

それによってメディアとの関係をより深くすることができたので、何か面白いニュースがあればこちらからも伝えますが、さらにメディア側からも取材していただける機会が増えました。

スポンサー営業とも同じで、「誰が・どんな思いで・なぜ・FC琉球でやっているのか」というのが伝わった結果かなと思います。

昨年は地元メディアで「FC琉球フロント奮闘記」という連載もあったのですが、それは思いがメディアに伝わったからですし、そしてまたその連載のおかげでスポンサーやファンにも相乗効果的に広まるという好循環が起こりました。

地元でも「FC琉球を応援したい気持ちがないわけではないけれど、何かよく分からない」という方々がいますので、できるだけ情報をオープンするようにしました。

――広報の方に質問です。チームのSNSもただ試合情報を流すだけではなく、明るく面白くなった気がします。これは女性広報の特徴かなと思います。今年の戦略はありますか?

(※広報・ゆいなさん) サッカー観戦というと男性のイメージですが、女性も楽しめる環境作りを目指しています。

私もそうですが、母と子でサッカーを楽しめることにフォーカスしたいなと思っています。

それが子供の夢にもなりますし、母親も楽しむ時間が必要な社会です。

もう少し具体的には女性コミュニティを作りたいです。

私自身が「Okinawan Girls」というガールズコミュニティを運営しているので、そのノウハウを活かしていきたいと思っています。

試合日に楽しむのはもちろんですが、試合のない日にも楽しめるようにしたいなと考えています。

女子会などもその一つですね。

育成型クラブを目指して

――今年はどの様にクラブを進化させていくのでしょうか?

今年はさらに育成・普及の部分にも力を入れていきます。

FC大阪やシュライカー大阪で指導経験のあるブラジル人のドゥダ氏をアカデミーに招聘し、フットサルスクールも新設しました。

ドゥダ氏にはフットサルスクールとジュニアユースの指導を兼任していただきます。

これからのFC琉球はTOPチームからの一貫した育成をさらに強化していく予定です。

個人的に好きなのは、マンチェスター・シティのような美しいサッカーですね。

そのために國學院久我山高校で名を轟かせた李済華GMにもアカデミーの指導に携わって頂きます。

※さらにFC琉球はインタビューの後、Jリーグ史上初となるクラブが運営する高等学校「FC琉球高等学院」の2018年4月新規開校を発表。

育成型クラブへの本気度がうかがえる。

――「日本サッカーの強化に必要なのはフットサル」とはよく言われる事ですね。非常に楽しみです。逆に課題はありますか?

僕の就任時から監督やGMともよく話し合っていて、予算などの制約もありますが、彼らの方針には非常に魅力を感じていたので基本的に信頼して任せています。

FC琉球は若手育成型のクラブで、大卒新人をうまく育てています。

その良さももちろんありますし、経験値も必要か?というのは考えています。

※インタビューの後、元日本代表FW播戸竜二選手を獲得。

また、スカウトにしても一部の人間だけでなく、複数の目で総合的に判断していくことも必要ではないかと検討しています。

※インタビュー後、早稲田ユナイテッドとの提携を発表。

sfida社長との兼ね合い

――倉林社長はFC琉球の社長だけでなくフットボールブランドsfidaの社長も兼任しています。両社の今後の協力や展望、またはsfidaの目標はありますか?

sfidaは2017年12月のEAFF E-1フットボールチャンピオンシップ(東アジアカップ)とサプライヤー契約を結び、こちらも飛躍しました。

sfidaとしての将来的な目標はワールドカップの公式試合球に採用されることです!

現在はadidasがワールドカップの公式試合球を提供していて、契約は5年で400億とも言われています。

莫大な金額ではありますが、逆に言えばそれだけあれば目標が現実的になるということでもありますし、明確な数字があるのは分かりやすいですね。

東アジアまでは来たので、次はアジア、そして世界へと、あと2ステップの所まで来ています。

――沖縄は日本では最南端ですが、東アジアでは中心に位置します。

そうですね!

それは就任時、浦崎沖縄県副知事からも似たニュアンスのことを言われました。

沖縄はブランド力がありますし、アジア展開にも有効だと考えています。

ここまで話した通り、FC琉球での1年目は奇策はほとんど無く、まずは「当たり前のことを徹底する」からスタートしました。

今のスタッフも本当に良く頑張ってくれたと感謝しています。

ただここからは色々な取り組みもしていきたいので、さらなるスタッフの増員も考えています。

スポーツ業界は夢がある反面、給料水準が低い方が多いのも現実です。

ただ僕としては業界のそういう面も変えていけたらと考えています。

もちろん情熱や気持ちは大切ですが、異業種で活躍している方々が流入してくるような産業にするためには、他業界と同等以上の待遇にしていく必要もあると思います。

スタッフが大事ですから。

――2018年の目標は?

現場としてはJ2昇格、フロントとしては経営力アップですね。

具体的な数字で言うと、就任前に約1.9億円だった年間収益を、2018年は3.5億円まで増やすことを目標にしています。

そして必ずJ2昇格!!

…いかがでしたでしょうか?

インタビューの後も、3月11日の開幕戦でORANGE RANGEとコラボした公式応援ソング「Ryukyu Wind」の解禁を発表。

さらに那覇市中心部からスタジアムまでのラッピングバスの運行など、様々な取り組みが次々とスタートしています。

FC琉球のJ2昇格はあるのか?

J3にも要注目です!

取材協力:FC琉球

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