〔霧島山(新燃岳)〕2011年の噴火活動と類似 当面は爆発的噴火継続の見込み-火山噴火予知連見解(3/13発表)

活発な噴火活動が続く宮崎・鹿児島県境の霧島山(新燃岳)について、火山噴火予知連絡会(予知連)は13日、現在の火山活動と今後の見通しについて見解を取りまとめ、当面は爆発的噴火活動が継続するとの見通しを示しました。

予知連によると、1日から噴火が始まった新燃岳では、6日には溶岩が北西側の火口縁から溢れ、外側の斜面をわずかに下りました。溶岩の噴出は9日頃には概ね停止したとみられます。また、9日頃からは爆発的噴火が活発となり、大きな噴石は火口から約2kmまで飛散したほか、大きな空振も観測されています。
一方、傾斜計やひずみ計のデータは、6日から8日にかけての溶岩の噴出時期に縮んだ後、次第に鈍化してほぼ停滞しており、この変化は地下深くのマグマだまりから新燃岳火口へのマグマの動きを反映していると推定されます。
9日以降の爆発的噴火は火口を覆う溶岩の内部で火山ガスによる圧力が高まった結果発生しているものと推定され、これは2011年2月以降の噴火活動と類似しています。
こうしたことから、予知連では、新燃岳は当面は爆発的噴火活動が継続する見込みとして、大きな噴石の飛散や空振の発生の可能性があるとしています。一方で、火口縁を超えた溶岩が斜面の下部まで達したり、溶岩の崩壊による火砕流が居住地域まで達する可能性は低いと考えられるとしています。
気象台では引き続き、火口から概ね4kmまでの範囲では弾道を描いて飛散する大きな噴石に、火口から概ね2kmまでの範囲では火砕流に警戒するとともに、火山灰や空振などに注意するよう呼びかけています。

■防災上の注意点
【火山性地震、火山性微動、爆発的噴火等の発生回数】(速報値含む)
       火山性地震  火山性微動  爆発的噴火
2月28日      65回      2回
3月 1日      183回     継続
   2日      101回     継続
   3日      213回     継続
   4日      320回     継続
   5日      151回     継続
   6日      517回     継続     18回
   7日      799回     継続     16回
   8日      221回      3回
   9日      229回     13回      1回
  10日      342回     17回      5回
  11日      166回      3回      2回
  12日      219回      5回      3回
  13日      220回      6回
  14日(00~15時) 147回      5回

【1日の火山ガス(二酸化硫黄)の放出量、火口外への溶岩流下距離】
     火山ガス放出量  溶岩流下距離
3月 2日      2200t
   7日     34000t
   9日      1100t
  10日      900t     約6m
  11日      800t     約10m
  12日      1300t     約6m
  13日      600t     約10m
  14日             約6m(9日以降約38m流下)

【火口周辺での警戒が必要な市町村】
・宮崎県 :都城市、小林市、えびの市、高原町
・鹿児島県:霧島市

【警戒・注意事項】
・警戒:(火口から概ね4kmまで)弾道を描いて飛散する大きな噴石/(火口から概ね2kmまで)火砕流
・注意:(風下側)火山灰、小さな噴石(火山れき)、火山ガス/空振による窓ガラスの破損/降雨時の土石流

■霧島山(新燃岳)火山活動の経過
<2017年>
・05/26 14:00 レベル1(活火山であることに留意)引下げ。
・7月頃から  霧島山の深い場所で膨張する傾向が認められるように。
・09/23から  火山性地震が日に10回以上観測されるなど次第に増加。
・10/04    現地調査で西側斜面の割れ目付近及び割れ目の下方で引き続き噴気と弱い熱異常域を確認。火山性地震は日に39回に増加。
・10/05 23:35 レベル2(火口周辺規制)に引上げ。
・10/06    1日の火山性地震の回数が163回に達する。
・10/09 15:12 火山性微動に伴う傾斜変動を観測。火山性微動は15:53まで観測された。
・   22:21 火山性微動が連続して発生。
・10/11 05:34 噴火発生。火口縁上300mまで噴煙上昇も、噴石飛散はなし。
・   11:05 レベル3(入山規制)に引上げ。
・10/15 19:00 火口周辺警報切替発表。噴火警戒レベル3は継続、噴石や火砕流の警戒範囲を火口から概ね3kmに拡大。
・10/17 00:30 この頃を最後に以降は噴火の発生なし。
・10/31 14:00 火口周辺警報切替発表。噴火警戒レベル3は継続、噴石の警戒範囲を火口から概ね2kmに、火砕流の警戒範囲を火口から概ね1kmに縮小。

<2018年>
・01/15    火山性地震が一時的に増加、16~17日には火山性微動も計3回観測。
・01/31    現地調査では、新燃岳西側斜面の割れ目付近及び割れ目下方の噴気の状態や熱異常域の分布に特段の変化は認められず。
・03/01 08:15 火山性微動発生、以降継続。
    11:00 山麓の宮崎県高原町付近で降灰との連絡あり。ごく小規模な噴火発生を確認。
    17:40 火口周辺警報切替発表。噴火警戒レベル3は継続、噴石の警戒範囲を火口から概ね3kmに、火砕流の警戒範囲を火口から概ね2kmに拡大。

・03/06 14:27 2011年3月1日以来となる爆発的噴火が発生、噴煙が火口縁上最高2300mまで上昇。爆発的噴火は以降も相次ぐ。
        上空観測で、火口内の東側で新たな溶岩を確認。また、火口の中心及び北側付近から噴煙が上がっているのを確認。
    22:01 爆発的噴火で、弾道を描いて飛散する大きな噴石の火口外への飛散がみられるように。最大700m飛散。
        監視カメラで、火口内の溶岩の盛り上がりや火映を観測。
・03/07 06:15 爆発的噴火、噴煙が2011年4月3日以来となる火口縁上3000mに。
        現地調査で、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量が1日あたり34000tと急増。溶岩が火口内に上昇してきたことによるものと考えられる。
        聞き取り調査で、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県の広範囲で降灰を確認。
・03/08 15:36 3月1日から続いていた火山性微動が停止。以降、振幅の小さな微動が断続的に発生。
・03/09 01:45 3月1日から続いていた火山灰を噴出する噴火が停止。
    10:10 産業技術総合研究所が、火口の北西側へ流出する溶岩流を確認。
    13:05 噴火が再び発生。
・03/10    未明に爆発的噴火2回。大きな噴石が火口外へ1800mまで飛散。噴煙は火口縁上4500mに。噴火の前後で、山体が隆起沈降する変動を観測。
    05:05 火口周辺警報切替発表。噴火警戒レベル3は継続、噴石の警戒範囲を火口から概ね4kmに、火砕流の警戒範囲を火口から概ね2kmに拡大。
        霧島市牧園町から実施した地形の観測で、火口北西側へ流出した溶岩が、1日で約6m流下しているのを確認。
        現地調査で、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたり900tに。
         高千穂河原観測点の傾斜計で、9日18:00頃から新燃岳方向がわずかに隆起する傾斜変動を確認。
    18:11 爆発的噴火で、大きな噴石が火口外1600mまで飛散。噴煙は火口縁上2800mに。
・03/11    上空観測で、火口の北西側から幅約200mにわたって溶岩が流下しているのを確認。赤外熱映像装置による観測では、火口の北西側で溶岩の流下により、わずかに熱異常域が拡大。
・03/12    高千穂河原観測点の傾斜計で、9日18:00頃から新燃岳方向がわずかに隆起する傾斜変動がみられていたが、12日07:00頃から停滞。
・03/13 11:15 火山噴火予知連絡会見解「当面は爆発的噴火活動が継続の見通し」

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