「一線越えた」「首相に責任」「再検査必要」

 「最後の一線を越えた」「最終責任は首相にある」−。国会を揺るがす事態となった森友学園への国有地売却を巡る決裁文書改ざん問題。野党は、安倍晋三首相周辺の関与があったのかどうか追及を進めている。公文書の改ざんによって新たに問題となった論点を、元官僚や法曹資格を持つ県内の野党議員3氏が指摘した。

 改ざんが確認されたのは、財務省近畿財務局が2015〜16年に森友側との土地取引の際に作成した14の文書。「本件の特殊性」といった文言のほか、安倍昭恵首相夫人に関する記述や複数の政治家の名前が、格安での払い下げ問題が明らかとなった昨年2月以降に削除されていた。

 「へりくつは言ってもうそはつかないのが官僚の『最後の一線』。それを越えてしまった」。経済産業省OBで希望の党の後藤祐一氏(衆院比例南関東)は、自身の官僚経験を踏まえてこう語る。

 後藤氏によると、決裁の途中で誤字などが見つかれば元の記載を残したまま二重線を引き、訂正印を押すなどすることはあるという。ただ、資料の内容を変えたり、記載の一部を削除したりする場合、「決裁途中なら最初から決裁をやり直すが、今回のように決裁後で文書が施行されてしまえば、やり直しができる話ではない。法に触れる話だと思う」と指摘する。

 公務員が職務に関して公文書を書き換えた場合は虚偽公文書作成、決裁に関与しないような立場の職員が書き換えた場合は公文書偽造・変造といった罪に当たる可能性があり、大阪地検特捜部が捜査している。

 公文書管理法の規定から、安倍首相の責任を問うのは、元通産官僚で民進党の江田憲司氏(衆院8区)。規定では、内閣総理大臣は行政機関の長に対し、公文書管理について改善勧告をし、報告を求めることができるなどとされている。江田氏は「各省庁の公文書管理に問題があれば勧告をできる権限があるのに放置していた。一義的には麻生太郎財務相の責任だが、最終的な責任は安倍首相にある」と強調した。

 13日に国会内で行われた野党ヒアリングでは、会計検査院の再検査を求める声も上がった。国有地売却の経緯を調査した検査院は昨年、「慎重な調査検討を欠いていた」とする報告書を公表。ただ、適正な値引き額までは資料不足を理由に踏み込まなかった。弁護士資格を持つ社民党の福島瑞穂氏(参院比例)はヒアリング後、「改ざん文書がこれだけ明らかになり、昨年の検査報告は信頼性が失われた。あらためて検査をする必要がある」と語った。

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