【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(20)】〈日鉄住金精鋼〉堺工場で第二期拡張工事 棒線事業ブランドSteeLinC参画企業として積極貢献

 日鉄住金精鋼は、自動車向けを中心に冷間圧造用鋼線(CH鋼線)・磨棒鋼・ビードワイヤを生産している。同社は1935年に浅尾製鋲所として創業。その後、業容を拡大し、梅鉢鋼業を設立した後、現在の主力製品であるCH鋼線の生産を開始した。79年に住友金属工業(現新日鉄住金)が資本参加。2004年に磨棒鋼メーカーの好と合併して磨棒鋼事業に参入。08年に住金精鋼に社名を変更後、翌年に大信線材と合併してビードワイヤ事業に参入した。11年には富士シャフトと合併し、12年に現在の日鉄住金精鋼に社名を変更した。

 同社の製造拠点は、堺・小倉・久留米・沼津の4工場体制。堺工場(大阪府堺市)と小倉工場(新日鉄住金八幡製鉄所内)ではCH鋼線を、久留米工場(福岡県久留米市)ではビードワイヤを、沼津工場(静岡県沼津市)ではCH鋼線と磨棒鋼を生産している。また、本社のほか、北九州・名古屋・沼津に営業拠点を構える。同社は新日鉄住金グループとして海外にも事業展開しており、東南アジア・中国向けCH鋼線は、小倉工場からの輸出に加えてタイのNSSPT社や中国のNSCh社と連携している。また、北米向けはアメリカのNSCI社が今後、主に対応する。

 同社の17年3月期の売上数量は、CH鋼線27万トン、磨棒鋼1万トン、ビードワイヤ1万5千トン。製品は自動車用ボルト・ナットやミッション部品など自動車向けが大半を占める。主要母材は、新日鉄住金八幡製鉄所材だ。

 日鉄住金精鋼は、これまで取り組んできた足元の体質強化に加え、次世代に向け確固たる経営基盤を築くため、2018~23年の6カ年の中期計画を策定。その中でも特に注力しているのが、今年から始まる堺工場の第二期拡張工事だ。拡張部の面積は約1600平方メートル。高付加価値製品製造のための新規設備の導入、レイアウトの変更を含めた生産性の向上、検査能力を拡充した品質管理や安全面での強化を図る。また、小倉工場を含めた残りの3工場でも老朽化対策だけでなく、環境負荷低減および生産性向上のための自動化やAI化に対応した仕組みづくり、全拠点全部門を網羅した生産管理システムの構築を行う方針だ。

 小寺昭吾社長は「持続的に成長する本当の意味での〝強い会社〟を目指し果敢に挑戦する。そのためには、製品の品質も大事だが、人材の育成も一層大事になる」という。日鉄住金精鋼では近年、人材育成に注力してきたが、これが安心安全・コンプライアンスを支える資源になるとの考えだ。製造・設備だけでなく、営業や管理など全ての部門でさらなる〝現場力〟向上を狙う。そのため、社内運営のルールの簡素化、組織間のコミュニケーション、階層別の体系的な教育プログラムを磨いている。風通しのよい職場環境を作り上げ、維持するためでもある。

 同社は中長期の国内マーケット需要減少への対応と同時に、少子化による労働力不足をにらんで、品質と生産性向上に向けた取り組みを実施している。

 新日鉄住金の棒線事業ブランド『SteeLinC』に参画。「プロセスソリューションの提案、品質管理のさらなる徹底やハイエンド商品の提供により、認知度と信頼度の向上といったブランディングに積極的に貢献していきたい」(同)と話す。また、「他社グループとの差別化がポイント。将来的には、お客様に迷わず新日鉄住金グループの製品・サービスを選んでいただける環境を国内外問わず構築したい」とし、ユーザーに「感動と満足をしていただく」ことを通じ、社会に貢献していく方針だ。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

企業概要

 ▽本社=大阪府堺市

 ▽資本金=3億6千万円(新日鉄住金の出資比率74%)

 ▽社長=小寺昭吾

 ▽売上高=220億円(17年3月期、単独)

 ▽主力事業=CH鋼線・磨棒鋼・ビードワイヤの製造・販売

 ▽従業員=357人(17年3月末、単独)

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