「こだわり」の投球を貫くか否か― 松坂大輔の乱調に見た理想と現実

中日・松坂大輔【写真:荒川祐史】

2度目のOP戦登板で課題残した松坂、古巣西武戦で3回3安打5四死球で2失点

 理想と現実――。いま、松坂大輔はその狭間にいるかもしれない。 

 14日にナゴヤドームで行われた古巣西武とのオープン戦。中日に新天地を求めた「平成の怪物」は先発のマウンドに上がっていた。開幕ローテ入りを目指す右腕にとっては2度目のオープン戦のマウンドだったが、結果だけで言えば、決して合格点とは言えないものだった。 

 3回を投げて3安打2失点。3つのフォアボールと2つのデッドボールを与えた。走者を背負いながらの粘りの投球だったと言えば、聞こえはいい。内容そのものは決して褒められるものではなかった。ボールは暴れ、制球に苦しんだ。抜け球や引っ掛けるボールが多く、3回で球数は76を数えた。実戦で最多となる球数を投げられたことは朗報ながら、課題は残った。 

 この試合、松坂はプレイボールから、振りかぶったワインドアップで投げた。両腕を掲げ、腰でリズムを取る姿は、まさに松坂大輔といえる姿だった。だが、以前の松坂の言葉を紐解くと、この日の荒れ球は、このワインドアップにも要因があったのではないか。 

 オープン戦初登板だった4日の楽天戦(ナゴヤD)。2回2失点、投球内容もまずまずだった松坂は、試合開始からセットポジションで投げていた。この日の試合前でのブルペンでも、松坂はワインドアップでの投球を試みていた。「振りかぶっていこうかなと思ったんですけど、セットポジションの方がバランスが良かった。暴れそうだなという感覚だったのでやめました」。バランスの悪さを感じ、登板直前にセットポジションでの投球を決断していた。

松坂が語っていた「こだわり」

 この楽天戦後に「(ワインドアップで)投げなきゃいけない、使っていかなきゃいけないと思う部分と、セットポジションの方がバランスがいいのであれば、ずっとセットポジションでもいいかなという両方の気持ちがあります」とも語っていた松坂。14日の西武戦では、この「使っていかなきゃいけない」という部分もあって、ワインドアップでの投球に踏み切ったのだろう。 

 松坂にとって、ワインドアップにこだわりがあることは以前にも記した。「僕は(ワインドアップの)見栄えが好きで、ずっとやってきて、こだわりの1つなので。できれば、ランナーがいない時は振りかぶっていきたいですね」と語っている。その一方で、ワインドアップにすると、投球フォーム中の動作が増え、右肩を痛めていた際に染み付いた癖、「余計な動き」が出やすいとも、右腕は以前に語っていた。西武戦での投球を見る限り、まだワインドアップでの投球フォームが思い描く形にはなっていないということなのだろう。 

 ソフトバンク時代の昨季、公式戦での登板はなかったものの、3月25日の広島とのオープン戦で松坂は、7回無安打無失点と好投している。その後、右肩の変調でシーズンを棒を振ることになったが、この試合で、松坂は腕を上にあげないノーワインドアップでの投球で快投を演じている。 

 松坂自身の理想はワインドアップにある。だが、現実的に安定感を求めるには、セットポジションが現状では良さそうだ。昨年の広島戦のノーワインドアップへのチャレンジも1つの選択肢となるかもしれない。松坂の開幕までのオープン戦登板は、あと1試合。理想を貫くか、現実に即するか。次回登板、右腕はどんな形でマウンドに上がるのだろうか。

(Full-Count編集部)

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