童話「いとこ麦」出版 認め合う大切さ描く 平戸・永田さん 根獅子小児童ら挿絵

 平戸市深川町の農家民宿経営、永田米吉さん(66)は創作した童話絵本「いとこ麦」(A4判、カラー16ページ)を自費出版した。挿絵は永田さんが読み聞かせに通う同市立根獅子小(吉島和泉校長、33人)の3~6年生全員計26人が手掛けた。
 「いとこ麦」は、人を比較してはいけないことをテーマにまとめたという。昨年、怪談「古和刈家の恐ろしい冒険」を児童と一緒に作製した永田さんは、今回も6年生の卒業記念として贈るために執筆。2月に「世界に一つだけの児童との合作を贈りたい」と、挿絵を吉島校長(59)に提案。子どもたちは色鉛筆の優しいタッチで仕上げた。
 絵本は豊臣秀吉によって朝鮮出兵を命じられたいとこ同士が主人公。松之助と吉十郎は、藩の部署に任官され朝鮮へ出兵したが、苦戦が続いた。吉十郎は退却の道を探しに山へ入った際、心臓発作で倒れている松之助を発見し助けようとしたが、周囲には虎の群れ。松之助は抜け道を描いた絵図と朝鮮の百姓にもらった麦を吉十郎の懐にねじ込み「おまえをねたんでいた。許してくれ」との言葉を残し、虎の群れへと身を投じた。
 無事、生還した吉十郎は百姓となった。いとこ一人の命も救えなかった後悔の念から、渡された麦を改良し「いとこ麦」として栽培。麦は領民の生活を支えた-という物語。相手の長所や個性を認め合い、励みとすることの大切さなどを訴えている。
 挿絵を手掛けた3年、久保愛実さん(9)は「少し恥ずかしいけど、みんなに見てもらうのが楽しみ」、永田さんは「絵を描く楽しさや、自分の作品が本になる喜びを感じてもらえばうれしい」と話した。絵本は同市内の小中学校にも寄贈する予定。

絵本「いとこ麦」を自費出版した永田さん(後列中央)と挿絵を手掛けた子どもたち=平戸市立根獅子小
「いとこ麦」の表紙と、子どもたちが手掛けた挿絵

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