一歩、また一歩

 写真のフィルムの現像、焼き付けをしたことがある-という方は、もう年配の域だろう。新聞社に勤める身でも、筆者などはその経験のある最後尾の世代に当たる。やれやれ、“生き証人”化してきたもんだ…▲現場で撮ったモノクロ写真は会社の暗室で現像できたが、カラーだとそうもいかない。30年ほど前の佐世保勤務のころ、三ケ町アーケードのカメラ屋さんにフィルムを持って行き、プリントの仕上がりを待ったのが懐かしい▲やがてカメラ店から通販に軸を移して急成長した-と言わずと知れた「ジャパネットたかた」の歩みをここに引くまでもないが、何事につけ「小さな一歩から始まった」といった話を聞くと、あのカメラ店の構えを思い出す▲経営難のそのチームをジャパネットホールディングスが「子会社」にすると表明したのは昨年の今頃だった。通販大手の創業者、高田明さんが社長に就くと、V・ファーレン長崎は快進撃を続けた▲やがて悲願のJ1昇格を果たした後の、待ちに待った初勝利である。5試合目にして湘南を相手に攻め抜いて、逆転勝ちした。昨春、出直しの新しい一歩を刻み、この春はJ1勝利の足跡をまず一つ▲一歩、また一歩。小さな、確かな、前向きな営みの先に、春はやって来るのだろう。春らんまんの季節を待つ。(徹)

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