母乳育児でもミルクを備蓄??子育て中の親に優しい防災情報を! 佐久市医師会情報がステキ!

災害後、母乳が出なくなったらどうすればいい?今回はとってもデリケートな問題です(Photo AC)

今回は、「母乳育児の人でも災害時にミルクや哺乳瓶を備蓄したほうがいいというけど、どうなの?・・・」という超マニアック論点といいますか・・子育て雑誌には書くことがあっても、リスク対策.comは読者層が違うかなとあえて触れてこなかったのです。でも、なんだか、古い情報が更新されていないままなのかな?と思うこともありまして。多くの人にちゃんと考えていただければと思い、問題提起いたします。

ただ、この話題はとてもデリケートなものなのです。ですので、前提として、この議論をするからといって、決して母乳育児だけがすごいとか、反対にミルクの方がいいとか、そのような普段の育児について賛否を問うものではないということ、ご理解ください。

なんだかしょっぱなから、伏線たくさんですみません。なぜ伏線を張るのかというと、例えば母乳育児の方は「赤ちゃんの体重が平均ほど増えてないのにどうしてミルクを足さないの?自己満足なのでは?」という外野の声に自己肯定感を下げられます。

また、逆にミルクや混合育児(母乳とミルク両方という意味です)をされている方にも「どうして母乳だけにしないの?愛情が足りないのでは?」という具合に、どちらを選択してもひどく心無い一言をあびせられるという残念な現象が日常にあるのです。

どちらを選択してもダメ出しというのは、きついです。そのためこの話題がでるだけで、どのような育児をされている方も、げんなりしてしまったりひどく傷ついてしまう話題であることをご理解いただきたいのです。

だから、この後に述べる母乳育児の話は、日常生活における優劣の話ではないこと、まずはご理解ください。私が大事だと思っているのは、災害時だからこそ、それまでその人が頑張ってきた育児の方法を否定せず、寄り添うことがより大切と感じています。ということで、やっと本題です。

母乳育児の人も災害時にミルクや哺乳瓶が必要ではないかという議論がなぜ出てくるかというと、母乳には、災害時のストレスによって一時的に出が悪くなるという現象があるからです。

「災害時に母乳の出が悪くなるなんて赤ちゃんが大変!それならば、母乳育児でも哺乳瓶とミルクの備蓄が必要だよね。これは普及しなければ!」と思う方がいるのは無理からぬことだと思います。でも、生命の仕組みは複雑かつ生存のための工夫に満ちています。まずはこちらをご覧ください。

出典:「◆災害時によくいわれる誤解◆「ストレスで母乳が出なくなる」って本当?」(NPO法人ラ・レーチェ・リーグ日本) http://www.llljapan.org/pdf/emg1101.pdf

出典:「◆災害時によくいわれる誤解◆「ストレスで母乳が出なくなる」って本当?」(NPO法人ラ・レーチェ・リーグ日本) http://www.llljapan.org/pdf/emg1101.pdf

上記にあるように、ストレスを受けるとなぜ一時的に母乳が止まったようになるのかということについて、原始時代に野生動物に襲われそうになった際、まず逃げるため母乳を止めて、落ち着いてから授乳できるようにしたと説明されることもあります。

ストレスで母乳が出なくなったら、ストレスをなくす環境づくりを

だから、ストレスがない環境に身をおけば、元のとおりになると言われており、実際災害時もそのように対処されています。

出典:「助産師が行う災害時支援マニュアル」(P11)
http://www.midwife.or.jp/pdf/disastermanualall.pdf

そのため、母乳育児の母子の支援で最も重要なことは、避難所の場合は落ち着いて授乳できる場所の確保や、母親に優しい声をかけてくれる人の存在と言われています。

しかし、そうは言っても、母乳が元にもどるまで赤ちゃんが心配。すぐにミルクをあげたほうがいいのでは?備蓄があればそれが可能なので、ミルクや哺乳瓶の備蓄もすすめたほうがいいのでは?と思われるかもしれません。

しかし、これもまた母乳特有の現象で、考えてみたら当たり前なのですが、授乳回数が減ると母乳が本当に止まってしまうのです。必要がなくなれば止まる、それが母乳なので止まるというわけです。そうすると、ミルクを飲ませてしまうことにより、母乳育児が継続できなくなります。

災害時、母乳の人のミルクまで確保しなければならないとなると、個人の備蓄はもちろん行政の備蓄も足りなくなります。ですので、母乳育児の方は母乳を継続する支援のほうが、ミルクや混合育児の方たちのミルクを奪いあわずにすむので、誰にとってもありがたく心落ち着く支援になるのです。

母乳育児中の親への災害時の支援について医学会、医師会、助産師会が発行しているパンフやリーフには、「母乳が止まったと思ったらすぐミルクをあげましょう!」と書いているものはありません。

ミルクが悪いとかそういう訳だからではありません。どんなにミルクがいいものであったとしても、赤ちゃんの飲む回数が減ると母乳が止まってしまう仕組みだからです。そのため、各種、パンフに書かれていることは、「母親がリラックスできること」そして、「赤ちゃんが欲しがるたびに欲しがるだけあげる」ということが指導されています。

母乳をあげ続けることで、親子のホルモンの分泌が促され、通常どおりの授乳が可能になるからです。同時に、足りていないと心配になりがちですが、赤ちゃんの様子を見る指針として、おしっこやうんちがいつも通りでていれば、栄養は足りているから心配しなくていいということが指摘されています。

出典:「被災地の避難所等で生活する赤ちゃんのためのQ&A」 (日本未熟児新生児学会 災害対策委員会版) http://jsnhd.or.jp/pdf/qafamily.pdf

ということで、例え、ミルクや哺乳瓶を備蓄していたとしても、母乳が止まったかに思えても、まず最初にミルクを与えるわけではないし、勧めることもしない。勧める場合は、医療機関のアセスメントが必要と指摘されているということを広く知っておいていただければと思うのです。

1)混合栄養も含め、母乳を与えている母親が、母乳の分泌を心配して必要量以上の粉ミルクを与えると、直接 飲ませる回数が減り分泌が減ってしまうことがある。粉ミルクは、赤ちゃんが母乳を十分飲めているかどうか のアセスメントをした上で、医学的に必要な場合にのみ慎重に与えるようにする。

「災害時の乳幼児栄養」に関する指針 改訂版 2011 年 4 月 より引用
(ユニセフ東京事務所 母乳育児団体連絡協議会 災害時の母と子の育児支援共同特別委員会) https://www.unicef.or.jp/kinkyu/japan/2011_0406.htm

岩手県大船渡市の助産師伊藤怜子さんから、東日本大震災時における避難所での母子支援の様子をお聞きしました。県立病院から避難所の仮設新生児室に入室してきた、すべての母子が母乳のみでした。避難所に別室を整え、母子が落ち着ける空間を作られたそうです。

家族が行方不明だったり、家が流されたりと想像を絶するストレスがあったことでしょう。しかし、授乳には母子がお互いに心を落ち着けるホルモンの作用もあるからか、お子さんにしっかり向き合っていらっしゃったのが印象的だったそうです。

ストレスがあってもいつも母乳が止まるわけではなく、適切なケアにより母親の体調管理が整えばミルクの備蓄も不要となることがわかります。

また、赤ちゃんの中にはアレルギーを発症させてしまうお子さんもいます。一般にミルクアレルギーと呼ばれるものは、新生児・乳児消化管アレルギーと言われています。これも、母乳でも発症例があるので、ミルクだけが悪いという話ではありません。

でも、飲んだことがないミルクでアレルギーを起こしてしまう赤ちゃんがいるのも事実なので、備蓄したミルクがあったとしても、それを初めて災害時使用できるかどうかは、母乳育児の方達には、ハードルが高いものだということも知っておいてほしいのです。災害時、医療が整っていない状況で、はじめてのアレルギー反応が起こってしまうと赤ちゃんにとって危険が伴います。

アレルギーのある赤ちゃんも

では、あらかじめミルクや哺乳瓶に慣らしておけばいいということでしょうか?そのように勧めている防災・減災の記述もあります。でも、ミルクや哺乳瓶に慣れてくれるお子さんもいますが、慣れることによって母乳育児を継続できなくなるリスクもあります。

実際、赤ちゃんは、理屈でこれは健康によいとか思って哺乳しているわけではなく、香りや肌の感覚など全感覚を研ぎ澄まして、良し悪しを決めています。慣れてないものに対しての拒絶反応は凄まじいです。それを慣れさせるということは日常生活の変更を意味します。

母乳育児が継続できなくなるという日常生活にリスクをもたらす防災・減災対策は勧めても実行可能性は低いです。さらに、アレルギーは大きくなれば改善されると言われており、早い時期に馴らしてリスクがないのかということについては、医療のアセスメントなしに勧めるわけにもいきません。

それゆえ、その人がミルクや哺乳瓶に慣れてもらったり、備蓄すべきかどうかは、日常生活の中での医師や助産師の方の個別の指導におまかせして、防災論として一般的に、「災害時は母乳育児の人も哺乳瓶やミルクを準備しましょう」「ミルクや哺乳瓶を嫌がることもあるので、あらかじめ慣らしておきましょう」と子育て世代むけの防災アドバイスの常套句みたいに、あっさり指導したり書かないほうがいいのではないかと思うのですがいかがでしょうか?

ところで、最初に母乳育児の人に対して、ミルクや哺乳瓶の話が明確にでてきたのは2006年のとある自治体のマニュアルでした。批判することが目的ではないので、冊子も持っていますが、自治体名は書かないでおきます。そこでは、「母乳育児の人も毎日哺乳瓶を持ち歩きましょう」という事が書かれていました。当時は、使い捨て哺乳瓶もない時代です。消毒が必要で水も不足する災害時なのに、哺乳瓶を持っていても役にたたないのになぜ?と思っていました。

そして、母乳が止まるかもしれないから、毎日哺乳瓶を持てというのは、「止まるかもというストレスで本当に止まりそうだね。呪いの言葉みたい」と子育て仲間の感想があったほど、暖かい支援という気配が感じられなくて残念な気持ちでいました。

その後の各地の震災や東日本大震災の経験から、さすがにこれは改定されて、母乳育児の人も毎日哺乳瓶を持てという不思議な記述はなくなりました。しかし、このマニュアルは各地に拡散されていました。そして自治体情報には、まだ、「母乳育児の人も哺乳瓶とミルクは備蓄しましょう」という文章が残っている所は結構あります。

東日本大震災から7年たった現在では、その時に流れた学会情報などは目にしなくなり、この自治体由来情報は残っているからなのでしょうか?それともコピペのせいなのか、なぜか最近、肝心の母乳育児が継続できる方法は紹介されないのに、「母乳育児の人も哺乳瓶とミルクは備蓄しましょう」と、医療のケアにも触れずにあっさり書かれているものを目にする機会が増えているのが気になっています。

でも、東日本大震災やその後の情報をわかりやすくまとめているものもあります。以下の、長野県の佐久市の医師会が作成した「教えてドクターアプリ」が素敵なのです。こちらの内容は、防災だけではなく、こどもが溺水する際の注意点やノロに感染した際の対応など、日常の子育てに役立つ情報が多く、アプリの内容が全国にシェアされている事が多いのです(私は佐久市在住ではないのに、アプリをいれています)。そして、子育て世代が佐久市での医療機関と普段から連携がとれるように工夫までされています。

「2015年、佐久市は子育て力向上事業の一環として佐久医師会に「教えて!ドクタープロジェクト」を委託し、佐久総合病院小児科が中心となって実施しました。 子どもの病気とホームケア、病院受診の目安などをまとめた冊子を作成し、同年12月から市内の保育園34か所を、開業小児科の先生方と協力しながら出前講座を行いました。さらに、その内容を元に無料アプリを作成し、2016年3月に公開しました」 (教えて!ドクター プロジェクトより引用)  https://oshiete-dr.net/about/

アプリを入れてなくてもこちらで防災情報は、見ていただくことができます。

■「教えて!ドクター」子ども・赤ちゃんと防災
https://oshiete-dr.net/column/bousai/

出典:「教えて!ドクター」子ども・赤ちゃんと防災 https://oshiete-dr.net/column/bousai/

すべての言葉が優しくて、厳選されているのが伝わってきます。

母乳をあげているお母さんへ
「粉ミルクが配られたけど・・・→粉ミルクが必要な赤ちゃんへ」
母乳には免疫成分が含まれているので、母乳をあげ続ける事で赤ちゃんが病気にかかりにくくなります。普段から粉ミルクが必要な赤ちゃんにあげましょう

「母乳が止まっちゃった・・→安心・リラックス・触れ合う」
まず避難所に授乳スペースを作ってもらってください!

「母乳が足りてる?→元気度チェックとおしっことうんちの回数」
下記の母乳育児のコツを試してみて変わらなければ、医療者や相談窓口に相談しましょう

いかがでしょう?

赤ちゃんと防災、子どもと防災

母乳だけでなく粉ミルクをあげている方にもとてもわかりやすい、優しさにあふれる記載が以下です。

出典:「教えて!ドクター」子ども・赤ちゃんと防災 https://oshiete-dr.net/column/bousai/

粉ミルクの場合は、ミルクと哺乳瓶、両方の殺菌が必要な事が簡潔に書かれています(哺乳瓶だけではなくミルクは殺菌が必要です)。

哺乳瓶については、使い捨て哺乳瓶が紹介されることがありますが、1つ400円前後で、1回ずつ使い捨てです。1日8回ですと1週間では60個必要ですから、12000円分の備蓄が必要になります。通常の哺乳瓶よりコンパクトになるものもありますが、金額的にも個数的にもすべてを使い捨て哺乳瓶の備蓄でまかなえる家庭は少ないです。

そのため、実際、被災現場で使われているのが紙コップを使った授乳です。「哺乳瓶の備蓄」や「使い捨て哺乳瓶の備蓄」が勧められていても、紙コップについて言及しているものがまだ少ないです。これについても、「教えてドクター」には、とても詳しく書かれています。

紙コップを使い捨てで1週間分60個を備蓄しても、歯科医用の衛生品でも100個で200円〜300円です。紙コップであれば、粉ミルクでも母乳の方でも備蓄しやすい価格ですので、念のため備蓄してねとすすめても、使わない際、食器にもなりますから、負担の少ないものになっています。

(母乳のお子さんにミルクを飲ませる必要が医療的に出てきた場合でも、紙コップであれば、赤ちゃんの飲み方が哺乳瓶に慣れてしまって母乳に戻りにくいという現象も起こらないので、その後の母乳育児の継続を妨げないと言われています)。

液体ミルクについては、現時点では自己責任による個人輸入品は可能です。販売価格は粉ミルクより高額になっていて、1回分200円〜300円くらいの価格です(送料別。使い捨て哺乳瓶つきはさらに値段があがります)。

粉ミルクは、70度以上のお湯で殺菌して、その後冷ます必要があります。液体ミルクはその手間を省けるということで、災害時だけではなく、日常でもミルクの調乳に慣れていない人に赤ちゃんを預ける際にも喜ばれています。

1回で使い捨て哺乳瓶とセットのものは、哺乳瓶を別途備蓄する必要もなくなります。液体ミルクでも、数回利用の哺乳瓶詰め替えタイプのものは、哺乳瓶については災害時消毒が必要です。3月12日付のニュースで、夏には日本でも正式に解禁されるとの動きがでています。

■乳児用液体ミルク、今夏にも解禁...災害備蓄に利用も(読売新聞)
https://medical-tribune.co.jp/news/2018/0312513392/

液体ミルクについてはこちらのリスク対策.comの記事も詳しいです♪

■乳幼児用液体ミルク、国内製造可能へ(リスク対策.com)
http://www.risktaisaku.com/articles/-/5278

ということで、母乳育児の人はそのまま母乳育児が継続できるように、ミルクが必要な方は液体ミルクの導入も含め、より親子の日常が維持される支援が必要です。非常時に備えて日常の大きな変更を促すのではなく、「非常時の環境をどれだけ普段の環境に近づけられるか」に留意している防災・減災情報がもっと広がってほしいと思っています。

出典:「教えて!ドクター」子ども・赤ちゃんと防災 https://oshiete-dr.net/column/bousai/

ここに書かれている「災害時でも、子どものケアは基本的には普段と同じです」という言葉かけは、子育て中の親の自己肯定感を下げない、素敵な表現だなと思うのです。

それまでの育児に対し、ダメ出しではない、寄り添う姿勢が嬉しいです。

また、「乳幼児や医療が必要な子どもは避難時にご近所の助けが必要です。誰に助けに来てもらえるか、あらかじめ決めておきましょう」という情報は、とても重要だと思っています。あたりまえすぎるのか、この情報は省略されることがあるので、こちらこそ、重点を置いて欲しいと思うのです。

保護者自身の健康管理も忘れずに!

そして、「つい子ども優先になってしまうかもしれませんが、保護者自身の健康管理も忘れないでくださいね!」なんて書いてあるのを見ると涙がでそうになります。災害時安心な地域は、日常から人に優しいということを実感します。

「災害時母乳が止まるのでは?→ミルクの備蓄を」という発想は世にあふれていますが、保護者に栄養のある食事を準備したり、授乳したりミルクをゆっくりあげるための落ち着ける場所の確保にむけて事前に動いている所はまだ少数です。

この点、東京都の文京区は、災害時0歳児と妊産婦について、大学と助産師会の協力で「妊産婦・乳児救護所」を設けています。

出典:文京区ホームページ http://www.city.bunkyo.lg.jp/bosai/bosai/bousai/hinanbasyo/ninsanpunyujikyugosyo.html

出典:文京区ホームページ http://www.city.bunkyo.lg.jp/bosai/bosai/bousai/hinanbasyo/ninsanpunyujikyugosyo.html

スタッフには、助産師、看護師、医師等の医療スタッフが入っていて、医療のアセスメントが可能な体制を整えています。

また、先ほど紹介した助産師の伊藤さんは、2011年5月に母子の支援室を開設されました。震災直後の母子の駆け込み寺として、安心の場を提供されていた関係で、現在は、地域の母子支援「NPO法人こそだてシップ」をたちあげ、保健師、栄養士、保育士の方と一緒に日々の暮らしの中で子育て中の親と地域をつなぐ活動をされています。

□NPO法人こそだてシップ
http://kosodateship.org/kosodate/

安易な自助を促すのではなく、公助と共助の体制を整える、それが、この問題には最も求められていることではないかと思います。

助産師会と自治体が災害協定を結ぶところも増えてきました。しかし、すべての避難所に数名派遣してほしいという要請があっても、助産師さんの数が足りないから協定を諦めたという地域もあります。文京区のように場所を限定してマンパワーを集中させる取り組みが増えればいいと思っています。

先日、乳幼児の子育て世代に講演をした際、参加者27人にお聞きしたところ、ほとんどの方が災害時母乳が止まるかもしれないという事や、液体ミルクの存在はご存知でした。しかし、母乳をあげ続ける事で母乳育児が継続できる事をご存知の方は0名でした。紙コップでもミルクなどをあげられることをご存知な方も0名でした。現在乳幼児を子育て中の方は、すべて東日本大震災後に生まれた子たちです。熊本地震より後のお子さんたちもいます。もっとも重要な情報が伝わっていないかもしれないことを危惧しています。

子育ての現場は「ワンオペ育児」や「孤育て」ともよばれるくらい孤立化が進んでいます。母乳育児は継続できるという重要情報、母乳育児の人にミルクをあげる際には医療のアセスメントが必要なこと、そのために地域の力を集める体制づくり、母乳育児の方のミルクの備蓄は、それらができた上で、最後におまけとして、もしも、母乳育児中の母親が死亡した場合や重篤な身体状況に陥ったケースとしてありうるが、その際にも医療とつながることが重要、という優先順位を飛ばさず発信していただきたいです。孤立化している中で、いきなり本人死亡(またはそれに類似)ケースのミルク備蓄情報が優先して届けられている現状は、酷な気がするのは、私の考えすぎでしょうか?

防災関係の方にお願いです。乳幼児の子育て世代に防災のことをお伝えする場合は、ぜひ、上記の佐久市医師会が作成した「子どもと防災」ページをプリントアウトして配布していただければと思います。

医療情報として根拠に基づき発信されています。加えて母乳でもミルクでも育児方法に関わらず、親子を支えることばに満ちあふれています。そのため、地域の方の思いやりが伝わりやすい防災情報になっています。

以上、マニアックな「母乳育児の人でも災害時にミルクや哺乳瓶を備蓄したほうがいうけど、どうなの?・・・」ということについて、いかがでしたでしょうか?

マニアックですが、実は、災害時と日常の連続性や支援の根本姿勢、それから、その後の地域がどのように存続していくかが問われる問題なのではないかと思っています。

この問題を通じて、すべての地域で、災害時であっても、その人のいままでの日常が否定されない、いままでの生き方や選択が大切にされる、そんな体制を整える地域が増えてくれたらと願っています。

(了)
 

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