川崎市選管アドバイザー小島さん退任へ 選挙事務一筋44年

 川崎市選挙管理委員会の選挙管理アドバイザーを務める小島勇人さん(66)が3月末で退任する。市職員として38年、定年後も非常勤顧問のアドバイザーとして6年。44年間にわたって市選管に身を置き、選挙事務の適正な執行に心血を注いだ。当代随一の選挙のスペシャリストとして、総務省や全国の選管から頼りにされる存在だ。「退任後も各地の選挙事務の向上に貢献したい」と話している。

 「投票用紙の手触り、開票所の張り詰めた雰囲気…。川崎の選挙の現場から去るのは少し寂しいですね」。選管事務局内の一室。部屋を埋める膨大な資料や書類を整理しながら、小島さんは話す。そして和やかな表情で続けた。

 「有権者が投じた票を正確に開票し、政治に届けるのが選管の使命。民主主義の根幹を担う仕事と肝に銘じてきた。後輩たちにも伝わっていると思う」 1974年4月に市役所に入庁。前年の採用試験の面接で希望を聞かれた際、大学で履修していた選挙制度論が頭に浮かび、とっさに答えた「選挙管理委員会」に最初の配属となった。

 29歳の時、旧自治省(現総務省)の選挙課に研修生として1年間出向した。小島さんは「全国の選管から届く質問に法令解釈を示す作業や国会答弁の作成補助が仕事だった。本当に勉強になった」と話す。

 市に戻ってからも選管一筋。事務局長の時に陣頭指揮した2011年の東日本大震災の被災地支援は忘れられない仕事だ。同年4月に川崎市の統一地方選を済ませた後、岩手県陸前高田市の支援に職員らと奔走した。

 職員を派遣し、自身も現地に6回入った。津波で命を落とした地元の選管職員がいたほか、選挙資料も散逸していた。古参の選挙管理委員から資料を借りて書類の復元から始め、適正に選挙を終えることができた。「地元の皆さんが本当に喜んでくださった」と振り返る。

 12年3月の定年退職と同時に、阿部孝夫前市長から「選挙管理アドバイザー」に任命された。川崎では衆院選16回、参院選15回、衆参同日選2回、統一地方選11回、市長選8回(単独執行)に関わった。豊富な経験から市町村職員中央研修所の講師に迎えられ、教え子の選管職員は全国で3千人に上る。白票水増しなどの不祥事に関わる他市選管の再発防止委員会の委員を依頼されることも増えた。

 「近年は不祥事やミスが多く、現場力が落ちている気がする。組織として選挙事務の意識やノウハウをどう継承するかは大きな課題と思う」。退任後も「選挙管理アドバイザー」の肩書は変えずに全国で活動を続ける考えという。

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