厳しい状況のDTM。スーパーGTとの『クラス1』規定の”プランB”としてGTE規定採用のウワサの背景

 2018年がメルセデス・ベンツ、アウディ、BMWの3メーカーで争われる最後のシーズンとなるDTMドイツツーリングカー選手権に、新しい動きがみられた。現在WEC世界耐久選手権やIMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップで採用されているGTE規定を、スーパーGT500クラスとの共通規定である『クラス1』に代わる、将来的な“プランB”として検討するというウワサが流れたのだ。

 先日、2018年シーズンに向けた合同テストを終えたDTMは、今季からクラス1規定の空力開発制限やサードダンパーの使用禁止を決めるなど、共通規定を採用し将来的な“相互交流”の実現に向け歩みを進めている日本のスーパーGT500クラスとは、若干、異なる方向性を打ち出している。

 2019年にメルセデスがDTMを去ると同時に、シリーズで採用するエンジンをGT500と同様の2リッター直列4気筒直噴ターボに変更することは決まっているものの、その変更を経ても新規参入が見込めなかった場合に備え、DTMを統括するITRとしては2020年以降に採用可能なレギュレーションの代替手段のひとつとして、現在WECとIMSAで採用されているLM-GTE規定の導入可能性も検討しているという。

 ITRとしてはクラス1規定の世界選手権化も視野に入れ、ウワサされるボルボ(ポールスター)やアルファロメオの新規参入も引き続き積極的に働きかけていくとみられるが、このLM-GTE規定の検討可能性について、ポルシェ・モータースポーツのGTチーム代表を務めるフランク-シュテファン・バリサーは、英国オートスポーツに対し「人々はすでに“GTM”の可能性について、それは楽しそうだと話しているよ」と、現在の見通しを語った。

「GTE車両を使用したドイツのチャンピオンシップは、今現在でも充分に想像可能な話でもある。タイヤ交換や給油の有無にかかわらず、GTEマシンでスプリントレースを開催することは可能だろうからね」と、バリサー。

「GTE車両はすでに準備され製作されているものだし、今すぐにすべてを始めることさえ可能だ。マニュファクチャラー自身がそれを望んでいるかって? その点だけは、私からはなんとも言えない部分だけどね」

 仮にDTMがGTEレギュレーションへと移行した場合、BMWだけが今季デビューを果たしている新型M8 GTEでエントリーが可能であるほか、ポルシェ、フェラーリ、フォード、アストン・マーティン、シボレーがすぐに新規DTMシリーズに参入する可能性が生まれる。

 一方のDTMレギュラーであるアウディは、新たにGTE規定のマシン開発を行うか、シリーズ離脱かの決断を迫られることになる。

「なにより、GTE規定はFIAにより策定されたレギュレーションなんだ」と続けるバリサー。

「そして少なくともコルベット、フェラーリ、ポルシェに関してはカスタマカーが供給されており、誰もがマシンを入手することが可能だ」

「GTEマシンのウィッシュボーンはスチール製だし、接触頻発のバトルでも容易にサバイブすることができる。さらに、エアロダイナミクスもそこまで過敏ではないため、仮にボディパーツの一部が破損したり欠落したような場合でも、そこそこのパフォーマンスを維持してバトルを続けることも可能になるだろう」

 だが、現実的にDTMはスーパーGTとのクラス1規定に関する契約を結んでおり、2019年にも交流戦が実現しそうな流れになっているため、GTE規定への変更は不可能に近い。DTM側としては新規メーカーの参入を促し、メルセデスに戻ってきてほしい狙いから、DTM内の一部の人間がGTE規定への可能性を示唆することで、メーカー側の反応を見ているのだと推測される。

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