金属行人(3月19日付)

 人事異動のシーズンになり、今月中に引っ越しの予定を立てている人も多いだろう。ただ今年は例年とちょっと様相が違う。メディアには〝引っ越し難民〟なる新語も登場している▼引っ越し業者のドライバー・人手不足、「働き方改革」による労働時間の見直し、通販市場拡大による配送業者の繁忙などさまざまな要因が重なっている。ようやく業者が見つかっても見積もりで数十万円もの費用を提示されたり、遠距離の場合に断られるケースもあるとか。業者は人と車両の確保が難しくなっており、希望通りに引っ越しできない人が急増する懸念が高まっている▼こうした事情を背景に、都内ではウイークリーマンションの契約が好調だという。転勤者が取りあえず仮住まいとして単身赴任で利用し、繁忙期をずらして4月下旬以降に家族全員が引っ越すのだという▼ドライバー・車両確保の困難は今後鉄鋼業界でも懸念される問題。流通の配送協力会社ではドライバーの高齢化や後継者問題、車両の老朽化などがより深刻になる可能性もある▼いくら良い製品を作っても現場やユーザーに届かなければ意味がない。鋼材が行き場を失う〝難民〟とならないよう、運ぶ人員と車両の確保は流通に付いて回る課題だ。

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