【シネマプレビュー】 「馬を放つ」 馬とともに生きてきたキルギス人の誇り

キルギス映画「馬を放つ」の1場面

 キルギスの名匠、アクタン・アリム・クバト監督(60)が、母国の口承伝説に根ざした素朴な話を、自らの主演で雄大な中央アジアの風景に溶け込ませて描いた作品。口の利けない妻と幼い息子の3人で暮らすケンタウロスは、美しい馬に強い執着があった。ある日、お金持ちのカラバイの厩舎(きゅうしゃ)から1頭の馬が盗み出される。やがて群れに紛れ込んでいたところを発見されるが、犯人をおびき寄せるために案じられた一計は…。

 馬の守護神の伝説や麦を発酵させた飲み物など、キルギス古来の伝統文化が随所に登場する一方、近代的な暮らしやイスラム教の伝道師などへの皮肉も盛り込む。中でも薄暗い大草原を監督演じる主人公が馬で駆る映像は、遊牧民族として馬とともに生きてきたキルギス人の誇りを示したいという力強さがみなぎっていてほれぼれする。ストーリーはよくわからない部分も多いが、雪を抱いた天山山脈が連なる遠景といい、ごろんと並べられた素材を眺めるだけで豊かな気持ちになるから不思議だ。

続きは、http://www.sankei.com/entertainments/news/180316/e...

© 株式会社産業経済新聞社