トロロッソ・ホンダ甘口コラム 開幕直前編:経験不足を密なコミュニケーションで補うホンダF1の新体制

 トロロッソ・ホンダの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価するF1速報WEBの連載コラム。レースごとに、週末のトロロッソ・ホンダのコース内外の活躍を批評します。今回は開幕直前編としてオートスポーツWEBにも甘口・辛口の両方を掲載します。
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 モータースポーツの世界では、経験は貴重だ。したがって、パートナーを組んで1年目となるトロロッソ・ホンダは、ライバルたちに対して『経験』という面でハンディを背負っていることになる。

 同時に、ホンダは内部の体制も変えている。これまで前任の長谷川祐介氏が務めていたホンダのF1プロジェクト総責任者というポジションを廃止。一人がすべてを統括するのではなく、栃木県で研究開発するHRD さくらとサーキットの現場にそれぞれ統括責任者を置き、役割を分担することとなった。HRD さくらを統括するのは浅木泰昭氏。現場は田辺豊治氏がその任に就く。

 田辺氏は新しい体制では新テクニカルディレクターだが、1990年代前半からF1に携わり、ホンダF1の第二期と第三期でも活躍していたベテラン。前任はインディカープロジェクトを担当し、昨年の佐藤琢磨選手のインディ500優勝も影で支えていた。その田辺氏は新しい体制での船出について次のように語っている。

「いい面も悪い面もあります。過去3年間のやり方を大きく変えるわけですから、慣例化していたこともあるわけで、時間はかかるかもしれません。でも、この新しい体制では、何がベストなのかを突き詰めて議論することができています。我々はこれが最善の手法だと思っていますし、トロロッソもそう感じてくれていますから、このやり方がうまくいくと思います」

 つまり、何事も良し悪しが表裏一体となっていて、経験もプラスになることもあれば、マイナスになることもあるというわけだ。例えば、人間関係という点では、経験は時に「わかっているつもり」という誤解を招き、経験のなさは逆に「相手のことがわからないから、もっと知ろう」とコミュニケーションを密にとるというプラスの作用が働く。

 今年のプレシーズンテストまでのトロロッソ・ホンダが、まさにそうだった。トロロッソとの8日間のテストを、田辺氏は次のように振り返った。

「トロロッソとのチーム結成が決まってから、たくさんのことを話し合ってきましたし、チームとして効率を上げていくために毎日議論を重ねました。現時点では、問題なく非常にうまく連携できていると感じています」

 これは、ホンダ側だけが感じていることではない。トロロッソのテクニカルディレクターであるジェームズ・キーもこう語っている。

「いくつか車体側にトラブルが起こったが、テスト全般としてはとてもうまくいき、順調にテストプログラムをこなすことができた。こんなに多くを走れたのはチームの歴史上初めてだ。これはホンダの努力が実を結んだもので、彼らとはとてもうまくやれ、いい関係を作れたという点でもテストは大成功だった」

 いよいよトロロッソ・ホンダの新しいシーズンが開幕する。経験がマイナスにならないよう、いつまでもコミュニケーションを密にとり続けてほしい。

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