『大英博物館プレゼンツ 北斎』 北斎の魅力を素人にも分かりやすく

Documentary film and guide to exhibition film (C) British Museum ,BIG COMIC Manga images in documentary (C) Shogakukan

 印象派の画家たちに大きな影響を与えた国際的な知名度の高さや、逸話の多いユニークな90年の生涯ゆえだろうか? 葛飾北斎は、これまでに幾度となく劇映画の登場人物になってきた。だが、ドキュメンタリー映画となると、本格的なものはこれが初めてだという。2017年の5月~8月に大英博物館で開催された展覧会“Hokusai:Beyond the Great Wave”をフィーチャーして、その舞台裏や北斎の、特に還暦以降の作品の魅力に迫っている。

 映画として何が優れているというわけではないが、北斎の専門家だけでなく、イギリス人芸術家デイヴィッド・ホックニーや日本の新鋭画家・出口雄樹らが、あくまでも外国人の目線で語ることにより、その魅力が素人にも分かりやすく抽出され、北斎の入門編としては最適。また、名高い“赤富士”をその貴重な初版画と比較しながら紹介したり、“大波”を最新技術でパーツごとに図解したりと、映像による効果も大きい。

 『富嶽三十六景』など代表作の多くを還暦以降に手掛け、90歳で亡くなるまで現役を貫いた北斎。決して生まれながらの天才ではなく、“偉大な芸術家は年を重ねるごとに進化する”という自らの信念を実践した彼の生き方は、現代に生きるわれわれ名もなき凡人にも希望を与えてくれる。人生は、まだまだこれからだと。★★★☆☆(外山真也)

監督:パトリシア・ウィートレイ

ナレーション:アンディ・サーキス

出演:デイヴィッド・ホックニー、ティム・クラーク、ロジャー・キース

3月24日(土)から全国順次公開

© 一般社団法人共同通信社