うそは電光石火

 「電光」はピカッと天地を照らす稲光。「石火」は火打ち石の火。電光石火とは、閃光(せんこう)のように、瞬時に何かがなされるさまを指す。ああでもない、こうでもない…と、うなってばかりのコラム書きは「電光石火の早業」と一度くらい言われてみたい▲ただでさえ途方もない拡散力だというのに、その速さも雷や火と並ぶらしい。短文投稿サイト「ツイッター」で、誤ったニュースは正しいニュースより20倍も速く拡散するという調査結果が発表された。20倍と言われても、分かるようで分からないが▲のみならず、偽ニュースの投稿はリツイート(転載)がより多くなされる傾向がある。うその情報の方が飛び付きやすいためだという▲とすれば、ひとくくりにはできないまでも、広めたくなる話ほど偽りを含む可能性は高くなる。好奇心を動力にして、偽りはネットの世界を電光石火のごとく駆け巡る、燃え広がる▲〈「談」は言葉の炎です/カッカと逆上すれば失言の火の手も上がるでしょう〉。吉野弘「談と訓」。ネット上の「談」は時に逆上の炎にもなる▲詩は続く。〈「訓」は言葉の川です/人を訓(さと)す言葉は淀(よど)みなくひんやりと行きたいもの〉。思えば7年前、大震災を巡るデマが燃え広がった。何を学んだか、何を学んでいないのか。冷やした頭で考えたい。(徹)

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