五輪自転車ロードレースのコース案に山北町 神奈川県内では2カ所目

 2020年東京五輪での自転車ロードレースのコース案に、山北町が含まれていることが分かった。既に浮上している相模原市に続き県内では2カ所目で、同市から山梨県を1度経由して山北に入る。ただ、山梨、静岡両県に接するわずか1・6キロの県道で、県内はおろか町内からも現地に直接つながるルートはない。人口減に悩む地元に降って湧いた五輪開催地の栄誉。“道なき道”に光を見いだせるか。

 国際オリンピック委員会(IOC)は2月、武蔵野の森総合スポーツプラザ(東京都調布市)をスタート、富士スピードウェイ(静岡県小山町)をゴール地点として承認。コースの詳細は調整を進めている。

 関係者によると、相模原市を抜け、山梨県の山中湖などを経由して富士スピードウェイに至るルートが有力視されており、山北町内を通過するのは県最西端で山梨県境の三国峠から静岡県境の明神峠を結ぶ県道区間とみられる。

 現地は、同町世附の山中に位置し、付近に住民はいないものの、登山コースの入り口でもあることから行楽客の往来もある。

 丹沢湖畔から林道が走るが、一般車両の進入は禁止。1千メートル級の山々が連なる西丹沢だけに、熟練の登山愛好家を除けば、同じ世附地区からも一度町外へ出ないとアクセスできない。静岡県小山町経由で向かえば、山北町中心部から車で30分以上の道のりだ。

 それでも、同町はロンドン五輪陸上女子マラソン代表の尾崎好美さんの出身地であるだけに、2大会ぶりの「五輪フィーバー」を期待する声も上がる。広告規制が厳しい五輪とはいえ、「町内から行く道がないのなら、せめて沿道に看板を立て町をPRできないか」といったアイデアも出る。

 面積は横浜、相模原市に次ぎ県内で3番目に広い同町だが、人口は1万535人(今月1日現在)。10年間で約2千人減少し、14年には民間有識者組織から「消滅可能性都市」として名指しされた。人口減問題の解決に向けて定住促進や観光振興に注力する同町にとって、五輪は国内外に発信できる千載一遇のチャンスだ。

 「何か地元に引き寄せて盛り上げる策を考えたい。隣の小山町はボランティアが多数必要と聞くし、県境を越えた連携も検討材料」とは湯川裕司町長。直接アクセスできない“近くて遠い地元”での開催に苦笑しつつも、前向きに方策を考えたいとしている。

 レースは男子が20年7月25日、女子は同26日に行われる予定。IOCの承認を経て今夏にも正式発表される見通しで、19年8月にはテストイベントが計画されているという。

© 株式会社神奈川新聞社