ATL予防 成果を報告 長崎大など 事業30年で記念講演会

 主に母乳を介して母子感染したウイルスが引き起こす成人T細胞白血病(ATL)について、先駆的に感染予防対策に取り組んできた長崎県の事業実施30周年を記念した講演会が21日、長崎市坂本1丁目の長崎大医学部であった。

 ATLは、母乳などを通じて感染するウイルス「HTLV1」が引き起こす血液のがん。発症率は5%程度で発症まで40~60年かかるとされるが、発症すると治療は難しいという。

 当時感染者が長崎県など九州に多かったことから、1987年、県の委託事業で長崎大などによる「県ATLウイルス母子感染防止研究協力事業連絡協議会」が発足。母親が感染している場合、人工栄養(ミルク)への切り替えや短期授乳などの対策に取り組み、成果を挙げてきた。

 同協議会会長の増崎英明長崎大学病院長は講演で「県内のキャリア率は明らかに減少し、長崎県の取り組みが全国に発信された」と報告。短期授乳などには課題もあり、最善策として人工栄養を推奨している点などを説明し、「今後ATLの有効な治療法の開発が望まれる」と述べた。

 講演会は同協議会主催。約70人が参加した。

母子感染防止の成果が報告された講演会=長崎市、長崎大医学部

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