好投続ける西武19歳ルーキー、恩師が振り返る驚きの逸話「この子はすごいなと」

昨年四国IL徳島で指揮した養父氏【写真:広尾晃】

西武ドラ3伊藤翔、恩師・養父氏が語る凄さとは

 ここまでオープン戦で好投を続けている埼玉西武ライオンズのドラフト3位ルーキー、伊藤翔投手。千葉県の横芝敬愛高を卒業後、より早くプロ入りの夢を実現するために独立リーグ、四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスに入団し、1年目の昨季、最速152キロの速球を武器に独立リーグ日本一に貢献。そして、昨年のドラフトで見事にプロ入りの夢を果たした。19歳右腕の良さはどこにあるのか――。昨シーズン、徳島で監督を務め、現在は自身が代表を務める野球塾、ルーツベースアカデミーで子供たちの指導に当たる養父鐵氏に聞いた。

 養父氏は、伊藤の投球を初めて見た時「いいボールを投げるな」と思ったそうだが、それ以上に性格がプロに向いていると感じたという。同氏は、シーズン前に行った投手会での出来事を振り返る。

「一人ずつシーズンの目標を言わせました。投手陣の主軸、松本憲明が『僕がエースだから、みんなしっかりついてきてくれ』と言ったんですけど、伊藤は『僕がエースだとか言っていますが、エースは僕ですから。シーズンが終わった時にわかると思います』と言い放ったんです。高卒の新人が、先輩たちの前ですごいこと言うなと思いましたよ」

 伊藤はさらに「MVPを獲得して優勝する」と豪語したというが、その言葉通り、松本と並ぶリーグ2位タイの8勝を挙げ、独立リーグ日本一を決めるグランドチャンピオンシップでMVPを獲得。ルーキーながらチームを日本一に導く活躍を見せ、有言実行を果たした。

西武・伊藤翔【画像:(C)PLM】

野球以外の一面にも養父氏は驚嘆「この子はすごいなと」

 養父氏を驚かせたことは他にもある。シーズン前に野球だけでなく、今後の人生でどうなっていきたいかを明記する「目標設定シート」を全選手に書かせたところ、伊藤はそれを詳細まで埋めたのだ。

「1年後にはこうなっていて、50年後にはこうなっている。何歳で車が欲しいか、何歳で結婚したいか。そういった内容を、伊藤はびっしり書いてきました。目標を明確に持ち、18歳なのに将来設定ができている。この子はすごいなと思いました」

 そんな右腕は、昨年6月に最速152キロをマーク。それまでは140キロ前後だった球速が10キロ以上アップした。養父氏はそんな速球とともに、コンビネーションの良さも魅力だと話す。

「ストレートもいいですが、コンビネーションの良さも特徴だと思います。牽制もクイックも上手く、フィールディングも野手ができるくらいです。スライダーもコントロールできる。とても器用ですね」

節目の試合で好投、「自信をつけていった」

 成長の裏には、シーズンを戦う中で自信をつけたことも大きいのではないかと養父氏は見ている。四国アイランドリーグplusは、巨人、ソフトバンクの3軍との交流戦が公式戦に組まれており、伊藤は8月17日の巨人戦、8月23日のソフトバンク戦で好投し、勝利投手になった。

「『ここで勝てば自信になる』という試合で、しっかり勝っています。シーズンを通して戦い、その中でNPBの選手を相手にしても、自分の投球ができたことで自信をつけていったと思います」

 1年間で夢を現実に変えたルーキーはまだ19歳。NPBの舞台で、これからどんな夢をかなえていくのか。右腕の活躍に期待がかかる。

(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2