平塚市博物館学芸員・鳫さん最後の星空案内 40年ファン魅了

 開館から40年以上にわたって平塚市博物館(同市浅間町)に勤めてきた天文学芸員の鳫(がん)宏道さん(65)が、今月いっぱいで退職する。2014年から始めた月1回のプラネタリウム特別投影「星空と音楽の夕べ」の案内役としても親しまれ、18日の最後の「夕べ」には多くのファンが来場し、別れを惜しんだ。

 1976年5月1日の開館と同時に採用された鳫さん。2011年にプラネタリウム投影機が3代目に更新された時の館長で、13年春に定年を迎えた後、再任用職員になった。

 クラシックとともに星空のあれこれを案内する企画は、音響にも配慮したリニューアル後の機能を活用しようと生まれた。鳫さんいわく「派手な番組は若者に任せて、年配者向けに」「ゆっくり、静かで、ちょっとうんちくのある」プログラム。録音でなく、折々の話題を取り入れた落ち着いた語りが魅力だ。

 当初は他の学芸員も担当したが「曲に合う映像、映像に合う曲を考えて構成して、時間を計って、星空投影の操作にCDの音量調整…。すぐに僕が選任という形になった」。

 「春はあけぼの」と題した18日の投影は、70席が埋まり、補助いす4脚を出した。シューベルトの「鱒(ます)」などクラシック6曲を流し、当日の星空紹介のほか、満開の桜や月に照らされた海岸など平塚の春景色、乙女座銀河団への旅などユニークな構成を披露した。

 50分の予定が1時間を超え、最後に「ありがとう」とあいさつすると拍手が起こった。場内が明るくなるとファンが鳫さんに花束を次々と手渡し、記念撮影も。「企画時は観客と一緒に自分も楽しもうと思っていたが、とんでもない。操作や時間配分に気を遣って大変でした」と鳫さん。最終投影を終えて「ほっとした」と静かに語った。

 「星空と音楽の夕べ」は鳫さん退任とともに一区切り。内容や担当者は未定ながら年4回ほどの「星空音楽館」への衣替えを計画している。

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