オーナー兼監督兼選手…高原直泰、「沖縄SV」での挑戦を聞く

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今年もJリーグが開幕し、日本列島が再びサッカーの熱い空気に包まれている。

地域によって“温度”の差はあれど、個人やクラブが持つ“熱”に大きな違いはない。それが、人と人との繋がりや時間による変化をもたらし、それぞれの地域でサッカー文化を形作っている。

そうしたなか、日本最南端の県・沖縄で、大きな挑戦している元日本代表選手がいる。

高原直泰―。

1999年のU-20ワールドユースで準優勝した「黄金世代」の一人。

2002年にJリーグの最優秀選手に輝き、その後ドイツで活躍。2006年のドイツワールドカップに出場したストライカーも、38歳になった。

彼は現在、2015年12月に創設された沖縄県に本拠を置くスポーツクラブ「沖縄SV(エスファウ)」において、オーナー兼監督兼選手という“三足の草鞋”を履いている。

今年、九州リーグに昇格した彼らだが、同時に『スポーツを中心にした地域創生』など広がりを持った取り組みも特徴的だ。

そこで、沖縄県から受託している「沖縄県サッカーキャンプ誘致戦略推進事業」や新シーズンに向けた準備の合間を縫って、高原にインタビューを敢行。

彼自身と沖縄SVの現在、そして未来について聞いた。

――沖縄に来てどのくらいが経ちましたか?

2年ですね。

――ここまでを振り返って、今のところの歩みとしてはどのような印象ですか?

何をもって順調かというのが難しいところではありますが、チームは上に上がっていますし、後はそれにチームとしての活動、地域貢献だったり地域創生をどうやってこのチームとして、役割を果たしていくか。少しずつではありますが形になってきている部分もありますし、今自分たちができる範囲ではやれているかなと。

ただ、それで十分かといえばそうではないですし、もっともっとやらなければいけないことがあります。当然現場レベルでもそうですし、チームとしてのことを考えると、まだまだやっていくことが多いなという感じです。

――チームの活動として、沖縄の伝統工芸とコラボしたポロシャツや地域資源(もろみ酢)を活用したドリンクなど新しい取り組みをされているとお聞きしましたが?

沖縄にあるものをどうやったらもっとアピールできるのか。

自分たちは今、沖縄でこういった活動をやらせていただくなかで、沖縄SVが発信源となりもっともっと多くの人に沖縄を知ってもらうのが良いのかなと。伝統工芸もそうですし、沖縄の地域資源をもっと県外や海外の方へアピールして沖縄を盛り上げていけたらと思っています。

どういう役割を担っていくかはそれぞれのクラブの考え方次第だと思いますが、自分のこのチームはそういう役割も担っていきたいです。

ただ自分たちが強いチームになって上を目指しますというだけでは誰も応援してくれませんし、やる意味もありません。

このチームがあることで新しいことが生まれる。今まであったものがもっと活性化できる。そういう役割を担っていきたいですし、それがJリーグの理念でもある地域に根差したクラブだと考えています。

そうしたなかで、自分たちはスポーツクラブ(※SV(エスファウ)はドイツ語で「スポーツクラブ」を意味するSport-Vereinの略)を掲げていて、今はサッカーのみですが将来的にはサッカーだけではなくもっと色んなことにチームとして取り組んでいきたいと思います。

――育成面ではクラブとしてどういった点を重視していますか?

人間性です。いい選手を育てようではなく、サッカーを通して様々なことを学び、一人立ちできる人間を出していきたい。そういったことをしっかりすれば自然といい選手も生まれてくると思っています。

地方はどこも一緒ですが、育成にどれだけ力を入れられるか、そこにかかっていると思います。

なので、育成に自分たちの考えを落とし込んでやっていけるか。ただ現状、自分やチームだけでは十分ではないので、周りの協力や助けも借りながら色々なことを経験させ、人間として成長できる環境を整えたいと考えています。

ここには自分の経験があって、中学生のときにU-15の日本代表に選ばれたのですが、当時は日韓ワールドカップ前だったのでそれこそ何か国行ったか分からないくらい海外へ行かせてもらいました。

あのときに多くの国へ行き、同じ年代の選手たちと対戦したり、その国の文化に触れたりすることができました。その経験が自分の今の考え方にも繋がっているので、同じような体験をさせてあげたい。そこが一番大きいです。

――沖縄にはFC琉球というJクラブがあります。そちらを意識することはありますか?

カテゴリーが違うので意識はしていないです。あえていうなら練習試合もやらせてもらっていますし、サッカーにおいて自分たちの刺激になる存在ですね。

FC琉球さんはもうJ3にいてJ2を目指そうというスタンスですが、うちはまだ地域リーグですから。創設から2年しか経っていないクラブですし、現状で同じ土俵にというのは正直おこがましいかなと思っています。

ただ、自分たちが沖縄の底上げになって、沖縄SVとFC琉球が存在することにより、沖縄のサッカーが盛り上がっていく。そしてサッカー以外のスポーツにも波及していけば、それは良いことだと思います。

自分たちがどうこうという考えでは結局、何のためにやっているのかが分からなくなります。ピッチ外の取り組みも含め、沖縄が盛り上がっていくきっかけになることが、このチームが存在する意味にもなるのかなと。

――今年の目標は?

チームとして今シーズンはJFL昇格が最終目標となります。そのためにはまず大前提として九州リーグ優勝を目指して日々トレーニングをしています。

九州リーグで優勝できて、はじめて全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)に出場でき、JFLが見えてくると思っています。

選手もある程度揃い、戦える力が備わってきました。ただ、選手がいれば勝てるわけではないので、どうやってチームとしてまとめ上げ、勝てるチームにしていくか、そこが重要ですね。

――昇格するためには、最後に“非日常的”な大会を勝ち抜く必要があります(※JFL昇格チームを決める地域CLは、1次ラウンドは3日で3試合、決勝ラウンドは5日で3試合を戦うという過酷な大会)。

そうですね。最後に一番厳しい大会があるので、それを目安に普段どういうふうにさせていくか。やはりいつも通り週一で試合をやっていても最後のところで戦えないでしょうし、最後の“3連戦”が続く状況を、常に想定してやっていかなければなりません。

選手の体に叩き込んでおく必要があると思いますし、そのための準備をしていきたいです。そういうリーグには上がったわけですから、しっかりとやっていきたいと思います。

オーナーとしてクラブを象徴する存在でありながら、監督としてチームを束ね、選手としても引き続きピッチでギラつきを見せている高原。

今回のインタビューでは沖縄SVというクラブについて率直に色々と聞いてみたが、特に育成の部分に話が及んだ際、一層気持ちが入った印象を受けた。

自身の経験や考えを、より直接的な形で、“次”へと繋げる―。

そうした思いの強さがベースにあるのかもしれない。

高原直泰の沖縄での挑戦は、まだまだ始まったばかりである。

なお、2018シーズンの九州リーグは、1stステージが4月7日(土)に開幕。開幕戦となる第1節、そして翌8日(日)に行われる第2節は、沖縄県・金武町での集中開催となっている。

沖縄SVは、7日の14:00から九州三菱自動車(昨季3位)、8日の10:00からJ.FC MIYAZAKI(昨季2位)と対戦。

昨シーズン優勝のテゲバジャーロ宮崎は今年JFLへ昇格しており、この開幕2戦は沖縄SVにとってかなり重要な試合となりそうだ。いきなり要注目である。