ブラーヴォ!イタリア③ イタリア人の鉄板!食とワインのマリアージュ

 肉料理には赤、魚料理には白…。なんて漠然と色をたよりにワインと食事を組み合わせていませんか? 産地、品種、テロワール…。それぞれに風味が違うのは分かるけれども種類が多すぎて、食とワインのマリアージュって意外と難しいんですよね。そんな〝難題〟にも、ワイン消費大国イタリアに答えを見つけてみましょう。イタリアンフードマーケット&レストランを運営するイータリー・アジア・パシフィックに聞きました。

 国土が南北に長く、海や川や山など変化に富んだ地形を持つイタリア。土着品種数千種類という人もいるほどさまざまな種類と味わいのブドウがそれぞれの地域で栽培されており、イタリアワインの魅力の一つである豊かな個性につながっています。同じように、地域によって多様性があるのがイタリアの食文化です。ワインはいわゆる「地酒」であり、土地の料理と非常に密接な関係があります。

 イタリア人が家族や地域をとても大切にするのは第1回でもご紹介しました。生まれ育った土地の料理と地元で育ったブドウで造られたワイン、これこそがイタリア人が愛するマンマの食卓なのです。ワインと食の鉄板マリアージュのヒントは、ずばりその「産地」にあります。

世界遺産に登録されたピエモンテ州のブドウ畑

 では、アルプス山脈を望み、比較的大陸性の冷涼な気候の北部イタリアから。ワインの王様と称される「バローロ」などの産地があるピエモンテ州は、ワインのほか、白トリュフ、米やヘーゼルナッツの名産地です。バローロ村を含む州南部のランゲ・ロエロ・モンフェッラート地域のブドウ畑は世界遺産にも登録されています。ここでバローロ、バルバレスコと同じ品種のブドウを使ったワイン「ランゲネッビオーロ」と一緒に愛されているのが、チーズです。

 ワイン生産地ならではのチーズ「ブラチュック」は、ネッビオーロ種やバルベーラ種というワイン造りに使ったブドウの絞りかすにつけ込んだチーズです。チーズの周囲に付着している黒い塊がまさにブドウ。ワインの香りと味わいがチーズに染みこんでいて、まるでワインを飲んでいるような感覚が味わえます。「オッチェッリ・アル・ペペ・ネーロ・エ・バッケ・ローザ」は、羊と牛の乳を使ったチーズ。しっかりとした黒コショウの風味で、お酒にぴったりのチーズです。チーズケーキのようなクリーミーな旨味の「ラ・トゥール」は、ランゲ地域の牛と羊、山羊の3種の乳を使ったソフトチーズ。なめらかな舌触りで、牛の乳の甘味と山羊乳の酸味、羊乳のコクが楽しめます。デザートワインとの相性も良さそうです。

上から時計回りに、ブラチュック、オッチェッリ・アル・ペペ・ネーロ・エ・バッケ・ローザ、ラ・トゥール

 比較的温和な気候の中部イタリアには、イタリア屈指のワイン産地であり、スーパータスカンの産地でも知られるトスカーナ州などがあります。同州キャンティ地方で生産される「キャンティ」は古くから生産量が多く、イタリアでは大衆酒として親しまれてきました。フィアスコというワラで包まれた丸底瓶で有名で、中世のトスカーナ地方の絵画にも登場するほど、イタリアの人にとってはなじみのあるワインです。フィアスコを編む職人が減ってしまい、今ではほとんどが他のワインと同様の細長いボトルで売られています。

 大衆酒の代名詞だったキャンティですが、スーパータスカンが有名になった90年代から高級ラインも造るようになり、テーブルワインから高級ラインまで幅広いバリエーションを持っています。酸味のしっかりとしたワインで、サラミ類やボロネーゼなど肉料理との相性は抜群ですが、和食の刺身や鮨とも意外と合います。実はトスカーナ料理はオリーブオイルや野菜、豆など素材の旨味を生かした健康的でシンプルなものが多く、日本食にちょっと通じるところがあるのです。日本人のしっかりめの夕食には合わせやすいワインでしょう。

キャンティとボロネーゼタリアテッレ

 最後に、典型的な地中海性気候を特徴とする南部イタリア。海の幸、山の幸に恵まれたシチリア州は、ギリシア人、アラブ人、ノルマン人などさまざまな民族からの侵略にさらされた土地でもあり、独自の食文化を持っています。マグロやメカジキといった新鮮な魚介類も欠かせません。「エトナビアンコ」は、ミネラル分の多いキリッとした白ワインで、フリットミストといただくのがオススメです。フリットミストは、イカやタコや小魚などの魚介にセモリナ粉を付けて揚げたもので、ミックスフライとよく似ています。和食の天ぷらとも合いそうです。

エトナビアンコとフリットミスト

 イタリアンフードとともにその土地で愛されているイタリアワインを楽しみながら、料理やワインが生まれた歴史的背景や土地の風景に思いをはせる。自宅にいながらちょっとイタリアバカンス気分が味わえるかもしれません。

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