横浜最古級の洋風建築「旧長濱検疫所」国の登録文化財へ 横浜市金沢区・横浜市磯子区

現在は資料館となった建物全景

 国の文化審議会は3月9日、金沢区長浜の「旧長濱検疫所1号停留所」を登録有形文化財(建造物)に登録するよう、文部科学相に答申した。登録されると市内の同文化財(同)は40件(金沢区2件)となる。

 1号停留所は1895年に建てられた木造平屋の建物(約420平方メートル)。横浜最古級の洋風建築として貴重な存在だ。コの字形でほぼ東西に長く、両端突出部に八角形平面の張り出し窓がついている。関東大震災で倒壊したが、復旧工事を行い現在にいたっている。

 当時はコレラやペストなど感染症の疑いのある人を一時的に停留させる施設として使用。上級の船客や船員らを収容していたため、隔離施設でありながらホテルのようなシャンデリアや装飾も。8つの宿泊部屋のほか、食堂、談話室があり、当時としては最も進んだ洋風施設だったという。

 また、旧長濱検疫所には、細菌学者の野口英世が22歳の時に約5か月間、勤務。ペスト菌を検出するなど功績をあげている。

 1986年からは検疫所に関連する資料などを展示する資料館として活用。当時の検疫で使用した器具や医療器具、来所した著名人の短歌などを所蔵する。今でも年1回、施設公開日に一般公開している。

「ほっとした」保存会も喜びの声

 「明治期の検疫所の建物が現存しているのは、全国で長浜だけ」と重要性を話すのは、野口英世細菌検査室保存会の田中常義会長(85)。同会はこの停留所の建物と所蔵資料を保存する必要を強く感じ、2015年から所蔵資料の目録作りに着手した。2年間月3回、現地に足を運び1000件以上の所蔵物を目録としてまとめ、同検疫所に提出。そして保存の機運を高めようと、地元での説明会を始めた矢先、文化財登録答申の報を聞いた。田中会長は、「壊されないことが担保され、ほっとした」と安どの表情を浮かべた。
 

一号停留所の食堂

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