『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』 あまりにそっくり。タイムマシンで本人をもってきた?

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 名優ゲイリー・オールドマンが今年のアカデミー賞で主演男優賞を獲得した作品です。彼が演じた実在の人物ウィンストン・チャーチルの姿は演技の枠を完全に超えて、ただただ、すご過ぎるの一言。ゲイリー本人から直々のオファーを受けて、実在のチャーチルに変身させた日本人メイクアップアーティスト辻一弘さんの素晴らしい技術はもちろんのこと、喋り方、動き方、声、何もかもがそっくりで、もはやチャーチル本人をタイムマシンでさらってきて、本人役を演じさせちゃってるんじゃないかっていうレベルです。

 昨年話題を呼んだクリストファー・ノーラン監督の映画『ダンケルク』は、ドイツ軍に追い詰められた兵士たちが脱出するまでを描いた作品でしたが、この映画では、厳しい戦況の中、チャーチルがいかに勇敢に兵士たちを救う作戦、通称ダイナモ作戦を決行することとなったかを描いています。

 当時、ドイツが圧倒的な攻勢でヨーロッパ諸国が降伏の意志を明らかにしていく中で、唯一諦めなかったのがチャーチルでした。彼が「絶対に諦めない! 邪悪なファシストに、この国は渡さない!」と、断固戦うと決意したことが第2次世界大戦の戦況を変えていったのです。民間の船を総動員して、30万人以上を救出したダイナモ作戦は、人民の声に耳を傾けたチャーチルだからこそできたことが分かります。めんどくさい頑固親父に見えても、実はまっすぐで情熱的で、気さくでチャーミング。高校生の息子の世界史の教科書を読んでも数行しか登場しないチャーチルの人となりを、映画を通して知ることができました。イギリスの歴史を知る最高のテキストです! ★★★★★(森田真帆)

3月30日(金)から全国公開

監督:ジョー・ライト

出演:ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、リリー・ジェームズ

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