セカンドハンド

 雨の日も、風の日も。「3年間ずっと着ていたものだから、着なくなったからって簡単にゴミに出しちゃう気持ちにはなれない、そんな人、多いんだと思います」。それが誰かの役に立つのなら…と寄せられたあちこちの学校の制服が事務所の一室を占領しているそうだ▲卒業などで要らなくなった制服を集め、必要とする人に無償で提供する。不登校の子の支援などに取り組む長崎市のNPO法人「フリースクール クレイン・ハーバー」が「学生服バンク」を始めたのは2年前の1月▲「400着ぐらいはありそうですね」。思いつきのような電話取材に、スタッフの井上陽子(あきこ)さんが丁寧に応じてくれた。先週の土曜には市内で「譲渡会」を開き、9着が新しい持ち主のもとへ▲「セコハン」って分かる? 30代の同僚に尋ねたら、きょとんと首をかしげられた。カタカナですか漢字ですか…と逆にいくつか質問も▲きちんと辞書にもある。「secondhand(セカンドハンド)」が縮まった「中古品」をいう言葉だ。きょうだいやご近所の「お古」や「お下がり」が当たり前だった遠くない昔がどこか懐かしく▲頑張って、と応援の気持ちを込めて差し出す「手」と、ありがとう、大切に使いますと受け取る「手」。2本の手がたくさんつながるといい。(智)

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