ロッテルダムで、上海で、LAで。どこで演奏される、どの楽曲も、刺激的で美しい。時折画面に映る聴衆に嫉妬したのは久しぶりかもしれない。ニューヨークのニュー・スクールでジャズを学び、極めながらも、その範疇を軽々と超えていく、今注目のアーティスト、ロバート・グラスパー。彼が率いる「ロバート・グラスパー・エクスペリメント」の世界各地でのライブ映像が、約80分の本作にぎゅっと詰め込まれている。彼ら初の映像化だそうだ。
インストゥルメンタルが素晴らしいのはもちろんのこと、レイラ・ハサウェイやアルジェブラといった素晴らしいアーティストを招いた歌モノには、ジャズとR&Bとの自然な融合を果たしたとされる彼ならではの魅力が詰まっている。加えてライブならではのセッションの楽しさや、場の高揚感も丸ごと伝わってくるから、ワインを開けて心をゆるめて、その世界にどっぷりと浸りたくなる。
一方で「このユニットも長くはないのでは？」と、そんなことも感じさせる自由さをもった彼らだからこそ、本作は記録映像という意味でも貴重だ。バート・スターン「真夏の夜のジャズ」をお持ちの貴方、今年の夏は本作とともに過ごしてみてはいかがだろう。
（ユニバーサルミュージック・3500円＋税）＝玉木美企子
