いつ、誰が、なぜ

 新米のころ、先輩に教え込まれた「ルール」がある。身に付いたのかおぼつかないまま、人には「これ、基本ね」と言っていたように記憶する。ニュースの記事は、始めの方に「5W1H」を持ってくる、と▲いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうやって。何かを漏れなく、分かりやすく伝えるのには六つのポイントがある。その英語の頭文字を取った「ルール」である▲どうも伝わってこないと思ったら、そうか、「5W1H」がない。財務省の決裁文書改ざん問題を巡り、改ざん時に理財局長だった佐川宣寿氏の証人喚問が国会であった。「改ざんはいつ?」「私には刑事訴追の恐れがある。(回答は)ご容赦を」。「刑事訴追の恐れ」とは、口を閉ざすのに使える万能の一語なのか▲「誰がやった?」「責任は私にある」。立場上、責任があったと言っているだけで答えではない。「誰の指示?」と問われれば「指示も協議も相談もなかった」▲では、なぜ? 首相夫人の名前も「特例的」の文字も、なぜ決裁文書から削られたのか。誰だってこう推し量る。削らないとまずいと考えたからだ、と▲なのにその点も明らかにされず、周知のことと言えば別のH-「森友学園に国有地をいくら値引きしたか」の「ハウマッチ」くらいだろう。疑念の霧はますます深く。(徹)

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