【進む自動車のマルチマテリアル化】150キロ以上の超ハイテン鋼加工、「ホットスタンプ」視野に 100キロ鋼や高強度アルミ使用拡大

 大きな変化の波が近づいている自動車産業で、現地調達の本格化やマルチマテリアル化を含めた新しい流れが、少しずつ見え始めている。超ハイテン鋼は現在のところ「150キロ鋼までは通常の金属プレス加工で使用可能」と見るが、さらなる高張力鋼にはホットスタンプ材が有力視される。現在主力の50キロ以下の鋼板は今後年々減り、2040年には全体の1割程度になる予測もある。エンジンの研究開発体制を見直したり、海外生産に切り替える動きも活発化しそう。今後の動きを十分に見極める必要がある。

 マルチマテリアル化については、すでにアルミや超ハイテン鋼の使用比率が拡大しているが、40~50キロ鋼板などの使用比率はいぜんとして全体の6割を占めている。

 調査会社のデータよれば、これが2020年には4割程度に減り、その分80キロ以上のハイテン鋼比率(ホットスタンプ材含む)が半数を占めることになりそう。30年には50キロ以下の鋼板の使用比率はさらに減り、2割程度となる予測。

 その分、100キロハイテン以上の高張力鋼の比率が増え、30年段階で約4割が超ハイテン鋼となりそう。今後10年程度で、自動車向けの素材は大きく変わるとともに、そこから発生する鉄スクラップの性質も大きく変わりそうだ。

 同時に増えると見込まれるのは、アルミ(高強度アルミ含む)。6000系などの使用は増え、30年には2割を占めると同機関では予測する。

 足元の議論では、コスト競争力に課題も残るため「当面は鉄の性能を使い尽くす」のが優先課題になっている模様だ。

 炭素繊維樹脂などの使用は、コスト面やリサイクル面に課題があるため、それほど普及しない見込み。全体の1割程度にとどまりそう。

 また、電動化に伴うガソリンエンジンの研究開発、生産体制についての議論も出ている。

 EVやFCVの比率が今後飛躍的に増えても、世界全体での主流はガソリン車になる見込み。しかし、日本や欧米などでは電動車比率が増えるため、自動車メーカー間での研究体制の協業、すみ分けを考えたり、生産、調達体制の見直しなども今後議論に上がってきそう。

 さらに、保護貿易の風潮が拡大し、生産の海外移転を再考する議論も活発化している。

 使用素材の変化や海外移転に伴って、地区鉄鋼業も各方面で対応を迫られることになる。今後の大きな変化を冷静に見極め、対応することが重要だろう。

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