[ReportNow!]ドローン測量の敷居を下げる「くみき」を体験

システムファイブセミナールームで開催された「くみき」導入セミナー
txt:小寺信良 構成:編集部

測量分野で活躍が期待される「くみき」とは?

手軽な空撮ツールとして今だ人気の高いドローンだが、産業界では監視・確認業務だけでなく、運輸や測量といった分野も大きく進化しつつある。その中で個人的に取り組んでみたいのが、測量分野である。

実は筆者の義兄が測量会社を経営しており、以前からドローンを使った測量の相談を受けているのだが、あいにく筆者は映像コンテンツ用の空撮しかやったことがない。ドローンの展示会などで空撮測量のブースを覗いたりもしてみたのだが、そもそも測量の基礎を知らないので、全くのお手上げ状態であった。

去る2月27日、システムファイブPROSEMINARの主催で、ドローン測量サービス「くみき」の導入セミナーがあるということで、まずは勉強のために申し込んでみたのだが、これが大変わかりやすかった。今回はそこで学んだことを、皆さんにもお伝えしたい。

撮影ルールと画像データ

従来ドローンで撮影した画像データを解析して測量データを得るためには、100万円前後のソフトウェアを使い、またそれが動かせるハイスペックなPCを使って演算を行なう必要があった。もちろんそれらの作業には経験が必要であり、導入するとなれば経験者を雇うか、社員を育てるか、いずれにしてもソフトウェア費だけではないコストがかかるものだった。

料金は3つのコースから選択

一方「くみき」は、株式会社スカイマティクスが提供する、クラウドツール型のドローン測量サービスである。利用は3つのコースから月額料金で設定されており、自社でソフトやマシンを用意する必要がない。「くみき」で解析できるような条件で写真撮影し、クラウドにアップロードすれば、あとはすべてクラウド側でやってくれるため、設定も何もなく必要なデータが得られるという、画期的なツールだ。得られるデータは、3D点群、オルソ画像、DSMデータの3種である。

撮影してクラウドに画像をアップロードする

使用できるドローンは、測量専用ドローンだけでなく、フライトルールをロードして飛行でき、インターバル撮影が可能な機体であれば利用できる。ただし静止画のExifに、緯度・経度・高度といったGPSデータが書き込んである必要がある。市販されている機体では、Inspireシリーズ、Phantomシリーズ、Mavic ProなどのDJI社のドローンでも利用できる。DJIの機体であれば、DJI GS Proという無料ツールでフライトルールの作成が可能だ。

撮影ルールとしては、進行方向のオーバーラップが90%以上、コース間のサイドラップが60%以上に設定する必要がある。またコース数は3以上、各コース4枚以上の撮影が必要となる。また一番端のコースは測量データが取れないので、広めにフライトする必要がある。

画像の重なり具合には一定のルールがある

アップロードして結果を待つだけ

では実際に無料トライアルアカウントを使って、画像のアップロードからデータ処理まで、一連の流れを見てみよう。

テストで使用した画像は、4000×3000ピクセルのJPEGファイルで、DJI Phantom 3 Advanceで撮影されたものだという。今回は15枚の静止画でテストする。

実際にドローンで撮影した画像

まずは「くみき」のサイトにアクセスし、プロジェクトを新規作成する。続いて画像をドラッグ&ドロップでアップロードすれば、あとはデータ化されるのを待つだけである。

プロジェクトを新規作成し、画像をアップロード

一度にアップロードできる枚数は、500枚まで。最低3コース、各コース4枚が必要なので、データ化できる最低枚数は12枚となる。画像が多い場合は、複数回に分けてアップロードする事になる。トライアルでアップロードできる静止画は、50枚までとなっている。

今回は15枚の静止画だが、クラウド上でデータ化される時間はおよそ20分程度であった。枚数が増えればそれだけ時間がかかることになるが、自社のマシンを占有するわけではない。

解析が完了すると、3種類のデータ形式でダウンロードできる

解析が終わると、3種のデータ形式でダウンロードが可能となるほか、ブラウザ上のビューワーで簡単な計測ができるようになる。ターゲットとなる場所の角度、仰角、距離、高さ、面積、体積を概算で出す事ができるほか、地形断面図も見ることができる。

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ビューワー上で簡単な計測もできる
※画像をクリックすると拡大します

https://www.drone.jp/wpdronenews/wp-content/uploads/2018/03/kumiki_seminar_crop015_big.jpg

地形断面図も見ることができる
※画像をクリックすると拡大します ここで気になるのは、画像の枚数と測量面積の関係である。例えばライトプランだと月刊処理画像枚数は50枚までだが、どれぐらいの面積を測定できるのだろうか。

これにはドローンに搭載されているカメラの解像度や飛行可能な高度、加えてどれぐらいの密度のデータが必要なのかによって変わってくるという。一例だが、解像度の1cm/pxだとすると、50枚で測定可能な面積は以下のようになる。

機体 高度 測量面積

業務用機 59m 17300m2

Phantom 36m 11600m2

Mavic Pro 32m 6500m2

正方形の土地だと仮定すると、1辺がそれぞれ約130m、107m、80m四方ということになる。もちろん上位のプランになれば、機体がMavic Proでもさらに広い面積を計測できることになる。機体とプランの価格バランスを見ながら、全体のコストを考えていく事になるだろう。

「くみき」の可能性

撮影さえしっかりやっておけば、簡単にデータ処理が可能なくみきは、これからドローンを業務に取り入れたいという事業者にとって、トライアルしやすいサービスと言えるだろう。無料トライアルでも、最低解析枚数の12枚のセットなら、5回はテストできる。

また測量業務だけでなく、文化的建造物のデータ化、海岸線など図面に書けない現状の把握といった事にも使えるだろう。パーソナルユースであっても、自宅周辺のデータ化や、思い出の車などのデータ化もできる。ドローン撮影に限らず、オーバーラップとサイドラップがきちんとできていれば、iPhoneで撮影した静止画でも解析可能だという。

実際に利用する側の立場からすれば、今のライトプランとスタンダードプランの間が開きすぎているようにも思うが、今後サービスが浸透してくるにしたがって、見直しも行なわれるだろう。今回のセミナーでは、ドローン測量に関して漠然としたイメージしか持てなかったものが、一気に身近なものになったという手応えを感じることができた。

ドローンによる測量は初期投資が大きく、果たして自分たちのビジネスになるのか、わかりにくい一面があった。だがまずは「くみき」でテストしてみることで、判断ができるようになる点は大きい。ドローンをお持ちの方は、ぜひ「くみき」で自分で撮影した写真からデータを作成してみていただきたい。

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