【ドローンジャパン2018】パネルセッション:ドローン産業における事業開発や、投資・スタートアップ支援最前線 ドローン前提社会において提供したい価値を議論し、ドローン産業のエコシステムについて中長期的なビジョンを共有する目的で、投資とスタートアップの最前線を業界で活躍する第一線のパネリストが熱い議論を交わした。

多彩なパネリストによるドローン産業のディスカッション

 パネルセッションに参加したのは、Drone Fund General Partner / Chief Dronistの千葉功太郎氏に、株式会社ORSO 代表取締役社長の坂本義親氏、そして株式会社アイ・ロボティクス COOの小関賢次氏の3名。モデレーターは、慶應義塾大学政策・メディア研究科 特任講師の高橋伸太郎氏が務めた。冒頭では、各自の自己紹介を兼ねた最新の取り組みが紹介され、千葉氏は昨年に立ち上げたドローンファンドについて解説し、5年後に到来すると予測するドローン前提社会に向けて、投資を通してTeam Japan Droneを支援していると話した。続く坂本氏は、ITサービスの会社を経営してきた経験を活かして、ドローン産業にも取り組んでいると語った。そして小関氏は、大手システム開発会社で飛行機の航空管制システムを開発してきた経験から、ドローンのための管制システム(UTM)に対する熱い思いを伝えた。
 各自の紹介の後、モデレーターの高橋氏が、5~10年後に、どういう社会が実現できたらいいのか、と尋ねた。それに対して、千葉氏は「インターネットの歴史とドローンの歴史は、非常に近い形で進行していくのではないか」と指摘し、ドローンが通信のパケットのような存在になり、遠隔制御されてインターネットのように当たり前の存在になると予測した。また坂本氏は「まずは仲間を増やす」ことが重要と捉え、2015年に設立したアカデミーを紹介した。そして小関氏は「災害対応など、初動捜査に活用するドローン」の存在は意味があると提唱した。

左から 慶應義塾大学政策・メディア研究科 特任講師の高橋伸太郎氏 Drone Fund General Partner / Chief Dronistの千葉功太郎氏 株式会社ORSO 代表取締役社長の坂本義親氏 株式会社アイ・ロボティクス COOの小関賢次氏

日本のドローン産業を加速させるには

 ディスカッションの後半では高橋氏が「日本において、ドローン産業の成長を加速させるには、スタート支援において何を重視しているのか」とパネリストに問いかけた。
 千葉氏は「グローバルにチャレンジする一体感が、圧倒的に欠けている」と指摘する。日本の市場は中途半端にビジネスになる市場なので、グローバルに日本の産業を輸出できるかが、重要になるという。
 坂本氏は「チームジャパンが、すごい重要」と話す。また、ドローンを飛ばした後に、データをどう活用するのか、ソフトに依存する部分が多いので、日本発で作れたらいいのではないか、と提案する。
 小関氏は「捜索にドローンを活用するには、人がやるものを自動化するよりも、先にドローンができることをどう使うか、それに対する模索が2~3年続いている」と振り返る。
 さらに千葉氏は「本質的には、ここにしかない価値。ドローンによって、はじめて実現できる財貨を掘り当てることが重要」と話し、坂本氏も賛同する。小関氏も「自動飛行がポイントで、課題はあるが、乗り越えていく」ことが大切だと補足する。
 一方で、千葉氏は「技術のソリューションは楽観視しているが、課題は民衆の心にある」と提言し「家や頭の上を飛び交う」ことに抵抗を感じなくなる社会的な理解が必要だと指摘する。そして、インターネットや携帯電話にスマートフォンが、日本の社会に受け入れられてきたように、丁寧にコミュニケーションを続けることで、完全な自律飛行を実現するドローンの社会実装が可能になると展望を語った。

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