転機に立つ医療・6完 介護との連携 「生活」の視点不可欠

 医療や介護、福祉に関する相談を1カ所で受けられる長崎市の総合相談窓口、市包括ケアまちんなかラウンジ(江戸町)。相談員で看護師の宮地登代子主幹は「先日もお年寄りから、病院に行けなくなったらどうしたらいいかと相談があった。在宅でも大丈夫ですよと説明しました」と話す。
 病院のベッド(病床)を減らし、在宅医療への移行などを進めて超高齢社会に対応を図る「地域医療構想」。国はこれと連動する形で「地域包括ケアシステム」の構築を目指している。高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、日常生活圏内で医療や福祉のサービスを一体的に受けられる体制づくりを指す。
 同システムは従来、介護保険制度の中で構築が図られてきたが、一方で医療との連携は進んでいなかった。4月はそれぞれの公定価格である診療報酬と介護報酬の同時改定時期に当たり、国は両方の改定で連携強化の方策を打ち出した。
 長崎市では、介護との連携が不可欠な在宅医療に取り組む医師の活動が以前から活発で、市もいち早く体制の充実を図ってきた。同ラウンジはこうした取り組みの一環で2011年、市医師会に委託し開所。相談業務のほか、在宅医療や医療・介護連携に関する市民、従事者向けの講座も開催している。
 市は新しい介護保険事業計画(18~20年度)に、在宅や施設での療養推進といった方向性を盛り込んだ。市福祉部の山口伸一政策監は「現状はまだ『最期は病院で迎えるもの』という認識の人が多い。住み慣れた場所で迎えることもできるということを広く知ってほしい」と話す。
 医療と同様、介護においても、県内では少子高齢化による介護保険財政の逼迫(ひっぱく)や人手の不足、偏在の課題がある。地域医療構想実現と地域包括ケアシステム構築は、見方を変えれば医療と介護の双方を、不足のない範囲で最大限効率化する取り組みともいえる。そうした側面がある以上、患者や利用者側が困ることが起こらないか、絶えず検証しながら進める視点が関係機関に求められそうだ。
 医療の側でも、介護との連携意識をより強めることが必要になる。「回復期」のリハビリ機能に特化した長崎リハビリテーション病院(長崎市銀屋町)の理事長で、地域医療や介護に詳しい栗原正紀氏は「医療には『生活』の視点がまだ足りない。救急医療で生活の準備、回復期で生活機能の再建を図り、日常生活に戻る準備を進め、地域に帰す-といった視点を持たなければならない」と提言する。

◎メモ/医療と介護の連携
 医療は都道府県主管なのに対し、介護保険は市町村が主体。2018年度は医療政策の基本指針となる都道府県の新医療計画(23年度まで)と、市町村の3年ごとの介護保険事業計画(20年度まで)が同時に更新。今回から双方が整合性を取る形が新たに整えられた。団塊世代が75歳以上になる25年までに地域包括ケアシステム構築を完了する目標を掲げている。

相談員らが常駐し対応に当たる「長崎市包括ケアまちんなかラウンジ」=長崎市江戸町

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