絵馬にしたためた「No.1」――西武エース菊池が自らに課す、さらなる進化

西武・菊池雄星【写真提供:(C)PLM】

3年連続開幕投手も「ほどよい緊張感で挑めると思います」

 3月27日、西武の開幕前の恒例行事・必勝祈願が狭山山不動寺で行われた。毎年、注目を集めるのが、監督・コーチ・選手たちが奉納する絵馬である。今年はどんな文字が絵馬にしたためられたのだろうか。

辻発彦監督 「健康」
浅村栄斗主将 「必ず優勝」
松井稼頭央選手 「日本一」「健康」
栗山巧選手 「日本一」
中村剛也選手 「勝ちたい」
秋山翔吾選手 「優勝」「フルイニング出場」
山川穂高選手 「打つ!」
源田壮亮選手 「日本一!!」

 それぞれが今季にかける思い、願いを言葉にしており、非常に興味深い。

 その中で、「No.1」と書き記したのが、エース菊池雄星だった。

 キャンプ3日目で開幕投手を通達され、3年連続で大舞台に立つことが決定。「毎回、開幕だからといって特別なことはしていないし、特別な緊張もありません。シーズン中の他の試合と同じ程度の、ほどよい緊張感で挑めると思います」と、なんとも頼もしい。

「No.1」への思いについては、「いろんな意味でです。個人としては、何をもって『No.1』か?ということになると思うので、そこへの定義はしていない」と明言は避けたが、名実ともに、すでに「現時点で日本No.1投手」との呼び声も高い。だとすれば、今季己に課すのは、さらなる進化となる。

 振り返ればちょうど1年前。それまでのエース・岸孝之が楽天へ移籍し、気がつけば「エース」の座を託されていた。

「その前の年に初めて2桁勝利をして、いきなり“エース”みたいな感じに言われて。どうしても、岸さん、涌井さん、西口さんなど“エース”と言われていた人があまりに偉大だったので、自分自身がその先輩たちと比べて、そこを基準に考えていた部分もありました。でも、今年はそういう部分は少しは減った。自分の求めらているものは何か、エースとして何ができるか、みたいな、自分の中の『エースとは』を、去年よりも考えるようになりました」

菊池がたどり着いたエース像とは…

 菊池が考える「自分の中のエース」とは、どんな姿なのだろう。

「正直、まだはっきりしたものはありません。でも、去年1年間やってみて、いろんな意味で『信頼してもらえる』ということが、勝ち負け以上に大事だったり、価値のあることなのかなと思いました。勝ち負けというのはコントロールできないですが、もちろん結果がないと信頼してもらえない。それプラス、ロッカールームでの振る舞いや練習への取り組み方などを含め、もっともっとチームに、ピッチャー陣にプラスになるような存在になれればと感じました」

 決して後輩や他者に対し、積極的に言葉でアドバイスをしたりするタイプではない。それでも、常に進化を追求するあくなき向上心と、その結果、得られることができる圧巻の成績こそが、菊池なりの最高のチーム牽引だ。

「自分のやるべきことをきっちりやって、淡々と1週間準備をするということを繰り返すことしかできない。それをいかに精度高く、徹底的に繰り返して半年間やれるか、がテーマです。自分ではコントロールできない勝ち負けに左右されず、それを貫くことって、実は結構難しいんです。その姿を見て、若手や他の投手に何かを感じてもらえることがあるなら、と思います」

 2018年シーズン。超えるべき存在は、もはや己のみ。誰もが認める「No.1」の称号を手にすべく、すべての面で精度向上を追求していく。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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