金属行人(3月30日付)

 「改革派のリーダー? そんなの要らないよ。必要なのは着実にもうけること。そして、事業をしっかり受け継ぐこと」と、ある老練鋼材商の経営者が言い放つ。敏腕を発揮し傾いた店を鮮やかに復活させた輝かしい経歴を持つ。そこに至るには当然、多くの「改革」があった。基盤が安定し、事業承継の問題が切実になってきたので、そんな逆説的なことを言うのか。どうやらそうでもない▼確かに、売り上げがあっても「もうけ」がなければ発展はない。浪費も感心しない。氏が昏倒しそうな会社を継いだ時、まず考えたのは「なぜもうからないのか」ということ。言うはやすいが、その改革の実現は簡単ではない▼「問題は、時代が変化しているということ。それにきちんとついて行って『もうける』という解を出すことが経営者の使命」と。流行にかぶれた改革を振りかざすのではなく、事業をしっかり承継した上で、商売を少しずつ変えていく▼氏の場合、仲間売りの世界から抜け出し、ユーザーに目を向け「加工・販売」に軸足を移した。「5S」を徹底し、今では独自の加工機を何台も操り、品質・納期ともに顧客に太鼓判を押される会社に。事業承継に悩む中小企業は増えているが、どう考えるか。

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