声の4番打者になる 東海大相模記録員・座間さん

 僕にはチームを勝たせる「声」がある−。選抜高校野球大会でベスト8進出を決めた東海大相模高のベンチには、そんな武器を持つ戦力がいる。記録員の座間嵩大(たかひろ)さん(3年)だ。

 その伸びやかな声は、静岡高と戦った29日の3回戦でも大歓声に負けじと響いた。「甲子園はやっぱり歓声がすごくて、さすがに外野までは厳しいですが、内野の選手には届いています」。ベンチから出た指示の“拡声器”となるのも大事な役割だ。

 全国制覇を狙うチーム内の信頼は厚い。長谷川将也部長(29)は「座間は単に盛り上げるだけではなく、『意味のある声』を出せる。野球の勘が良いから指示が的確で、相手投手のプレッシャーにもなってミスも誘える」と話す。

 中学時代は長野県の強豪チームの4番打者だった。3年の夏、東海大相模高が甲子園で優勝し、「できるだけ強いところでやりたい」と神奈川にやってきた。

 強豪の選手層は厚かった。昨秋、記録員の打診を受けた。「選手を目指してきたので、複雑な部分はありました」。だが門馬敬治監督(48)は口癖のように言っていた。「相模にとって、声は一つの武器だからな」。自分にしかできない「声の4番打者」になろうと決めた。

 スコアブックの書き方を覚え、「記録をつけながらだと、相手の傾向がもっとわかる」と気付いた。「相手に伝わって初めて意味がある」と、声の質にもこだわる。

 甲子園では、裏方として雑務や選手のスケジュール管理も担う多忙な毎日だ。「やるからには全力で」。嵩大という名前には山のように高く大きく、という意味が込められている。目指すは日本一の頂だ。

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