メクル第261号 不登校の子どもへの支援に取り組む 古豊慶彦さん(30)=長崎市在住= 「きついな」と声に出して 身近な人に打ち明けよう

 不登校や引きこもりに関する情報誌(じょうほうし)「今日も私(わたし)は生きてます。」の編集(へんしゅう)や、不登校の子どもへの訪問支援(ほうもんしえん)活動などに取り組んでいる古豊慶彦(ふるとよよしひこ)さん(30)=長崎市在住(ざいじゅう)=。古豊さん自身の不登校経験(けいけん)とともに、メクル読者へのメッセージをもらいました。
 新しい友達や制服(せいふく)、校則(こうそく)、休み時間のすごし方、話題-。小学校時代とがらりと変わった中学校生活になじめず、1年生の5月から学校を休むようになりました。
 「何してんだ、おれ」と自分をせめる日々。親が調べてくれたフリースペースには行く気になれませんでした。年明けから中学校に通えるようになり、その後は特に休まず卒業。県立高校に進みましたが、それまで「行かなきゃ」だった学校への意識(いしき)は、「自分にはどうやら合わないぞ」に変化。高校2年になると全く行かなくなりました。
 何もすることがない自分を心配した母のすすめでアルバイトを決意。インターネットで見つけた北海道のユースホステルで4カ月間、住みこみで働きました。スタッフは全国を旅している人、会社の長期休暇(きゅうか)で来ている人、仕事をやめた人などさまざま。人生いろいろだなと感じました。
 充実(じゅうじつ)した日々が終わると、「高校に在籍(ざいせき)しているけれど学校に行っていない自分」という現実(げんじつ)が待っていました。家以外に居場所(いばしょ)がない。そんな自分を少しでも変えようと、以前は抵抗(ていこう)があったフリースペースに一歩ふみ出しました。
 10代の子が7、8人いて、読書をしたりカードゲームをしたり。想像(そうぞう)していた暗い雰囲気(ふんいき)はなく、みんなカラッとして居心地が良かった。週1日足を運ぶうちに、将来(しょうらい)、不登校の子どもたちをささえる側になれたらと思うようになりました。
 高卒認定(にんてい)を受けて京都府の大学へ。現在(げんざい)、「フリースペース長崎」(長崎市館内町)で働いています。発行する情報誌には、不登校や引きこもりを経験した人の話などを掲載(けいさい)。昨年6月、第4号を出しました。
 不登校の子どもの家に行っていっしょにすごす訪問支援活動を始めたきっかけは「息子の話し相手になってほしい」という依頼(いらい)。家で将棋(しょうぎ)をしたり、ゲームをしたり、その子がやりたいことをやっています。毎月市内で相談会も開いています。日々の不安を少しでもわすれられる時間をすごすことで、これからのことを本人自身が考える心の余裕(よゆう)が出てくると思います。
 今、なやんでいるメクル読者へ伝えたいことは、「学校は、命をかけてまで行くところではない」ということ。「学校に行きたくないと思うことは悪いこと」というイメージは大人にも子どもにもまだまだ根強いですが、立ち止まったり、なやんだり、「きついな」と声に出すことは、何もおかしいことじゃない。まずは、身近な人に打ち明けてみてほしいです。いろいろな相談機関もあります。だれかがこまったとき、自分の活動も、その選択肢(せんたくし)の一つになれたらうれしいです。
 フリースペース長崎(電095・829・2945=木曜午後のみ)または古豊さん(電090・3987・9202)

不登校経験や現在の活動について話す古豊さん=長崎市、フリースペース長崎

© 株式会社長崎新聞社