新幹線長崎ルート試算提示 「前進」勢いづく県政財界 ミニとの差微妙 不満も

 九州新幹線長崎ルートの整備方法3案のうち、最も費用対効果や時間短縮効果が高いのは全線フル規格-国土交通省がこうした検討結果を出した30日、本県政財界からは「優位性は明らかだ」と勢いづく声が相次いだ。ただ、ミニ新幹線との“差”が微妙なため「もっとはっきり出してほしかった」と感じる関係者もいた。
 「今の段階の気持ちとしては、やはりフル規格を目指したい」。中村法道知事は報道陣にそう答えた。国交省報告でフリーゲージトレイン(FGT、軌間可変電車)の山陽新幹線乗り入れは「なし」とされ、全線フルかミニ新幹線の「いずれかを選択することになるかと思う」との認識も示した。
 だが全線フルの追加費が約6千億円、うち佐賀県負担は約1100億円に膨らんだ。中村知事は「佐賀県の皆さんがどう評価をするか意見を聞き検討を進める」と表情を引き締めた。その上で、関係法規に基づき地元負担の割合が定められている点に触れ、佐賀の負担を一部でも“肩代わり”する考えは「今の段階で申し上げるべきではない」と慎重だった。園田裕史大村市長は国に対し「佐賀県の負担も含めた財政的な配慮を」と望んだ。
 全線フルについて田上富久長崎市長は「西九州全体の浮揚につながる」、宮本明雄諫早市長も「費用対効果が優位なのは明らか」とコメント。長崎商工会議所の宮脇雅俊会頭は「早い時期にルートの将来像を示して」と求めた。
 「一歩も二歩も前進」。全線フルを目指す議員連盟や経済団体などでつくる長崎新幹線建設推進実行委の八江利春会長はこう評価しながらも「議論の余地を残した。はっきりとミニ新幹線との差を出してほしかった。フル規格の(想定工期)12年も短くできるのでは」と、ふに落ちない様子。それでも「手綱を緩めず佐賀側に働き掛ける」と誓った。

与党検討委の結果を受け「フル規格を目指したい」と語る中村知事=県庁

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