新幹線長崎ルート試算提示 3案、一長一短

 九州新幹線長崎ルートの整備方法で国交省が30日示した3案の投資効果や収支採算などは、その特性から一長一短の結果となった。ポイントをまとめた。

 ◎全線フル規格
 全線フル規格の最大の利点は長崎-博多間が1時間を切る時間短縮効果。安全性に対する安定感も群を抜いており、JR九州は以前から「自信を持って応えられる」としてきた。試算で同社の収支は約88億円の黒字と算定された。
 課題は財源確保と工期の長さ。追加費用は、大方の予想を超えて約6千億円。このうち佐賀県負担は約1100億円と見込まれ、同県が反対姿勢を強めそう。工期は約12年だが、環境アセスなどを経る必要があり、開業見込みは2034年度となる。

 ◎ミニ新幹線
 全線フルとともに有力候補に浮上したのがミニ新幹線。山形、秋田新幹線で採用されているが、長崎ルートでは「単線並列」と「複線三線軌」という、いずれも東北とは違う2方式が案に上がった。
 全線フルに比べ費用負担を半分以下に抑えられるが、開業見込みは単線並列32年度、複線三線軌36年度と、さほど変わらない。在来線を使うため、工事中に運行するか、運休するかで住民への影響は違う。運行本数が減るケースや仮線設置を要するなど課題が多い。長崎-博多間の所要時間は、単線並列が約1時間20分、複線三線軌が約1時間14分とFGTと同程度。

 ◎FGT
 本来導入予定だったFGTは、一定の時間短縮効果と在来線を活用した建設費抑制で注目されてきた。車軸摩耗問題の技術的克服には一定のめどが立ったものの、コストは一般の新幹線の「1・9~2・3」と高止まりし、導入は風前のともしびとなっている。
 練り直された今回の試算では、開発が順調に進んだ場合でも工期に約9年かかり、開業見込みは27年度となった。全線フル、ミニ新幹線に比べると短いが、肝心の山陽新幹線に乗り入れられないと結論づけられた。

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