もう一つの観櫻火宴 千々石の住民が海岸を炎で彩る

 たいまつを手に約150人の武者行列が長崎県雲仙市千々石町内を練り歩いた「観櫻火宴(かんおうかえん)」。3月31日、出発地点の千々石海岸には、勇壮な炎の行進を後押しするように、地域住民手作りの小さな火が揺らめいていた。
 観櫻火宴は、同町にあった釜蓋城が1577年、佐賀の龍造寺氏の侵攻を受け落城した史実に基づくイベント。郷土を守るため戦った城主の思いをまちづくりに受け継ごうと毎年春に開いている。
 桜と武者、炎の共演として定着した同イベントに協力しようと、海岸沿いの上塩浜地区の住民らが5年前からキャンドルを設置。約300個から始まった取り組みは年々増え、今年は約600個を設置した。同地区の松崎一二さん(57)は「まちづくりの力になれたらいい」と話す。
 同海岸は龍造寺軍が上陸した際、激戦が繰り広げられた場所とも言われている。諫早市森山町から訪れた50代女性は「散った武士たちへの鎮魂の光みたい」と思いをはせた。
 まちづくり、鎮魂-。それぞれの“別物語”を紡ぎながら、小さな火の列は勇壮に進む武者行列を見守っていた。

「観櫻火宴」の出発地点である千々石海岸に並べられたキャンドル=雲仙市千々石町

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