【住友商事グローバルメタルズ新生スタート】〈住友商事・堀江誠専務・金属事業部門長に聞く〉 住友商事と一体運営「金属事業の中核的な役割期待」

――住友商事グローバルメタルズは旧住商スチール時代から、住友商事名義の取引代行など、住友商事の業務委託先としての役割を果たしてきました。4月から新たに「プロフィットセンター」として始動した新生・住友商事グローバルメタルズに期待することは。

 「独立した企業体としてボトムライン(純利益額)に責任を持つことで、住友商事の金属事業における中核的な役割と機能を担って欲しいと期待している。社員一人ひとりが自覚と責任を持って、住友商事の金属事業に貢献してもらいたい」

 「キャリア(中途)採用を含めて、これまで以上に専門性の高い人材や尖った人材を採用・育成しやすくなる。人材多様化を加速して専門性を一段と高めるとともに、スピード感を持って経営上の意思決定が機動的に出来る体制を構築する。そのために必要な権限の委譲も行う」

――具体的なボトムライン(純利益)の期待レベルは。

 「金属事業部門の中で一定の割合を稼ぎ出してほしいと考えており、予算数値として設定する」

――住友商事本体との連携について。

 「これまでも一体運営を心掛けてきたが、今後も住友商事と住友商事グローバルメタルズとが一体運営をしながら、総合力を発揮する形を追求する。国内のコイルセンターを始めとする事業会社は、住友商事グローバルメタルズが管轄する形となる」

――4月1日付の事業会社の株式移管は国内6社で、新発足の紅忠サミットコイルセンターを含めて直接投資は7社=別表のとおり=に限られます。

 「亜鉛鉄板(GI)などの海外事業や特殊鋼分野の二次加工会社なども、将来的には住友商事グローバルメタルズに株式を移管する方針だ。海外向けのトレーディング(製品販売)は、4月1日付で半分以上を住友商事グローバルメタルズに移管しており、その名の通り、国内・海外双方のビジネスを手掛ける企業だ」

――社員550人のうち、住友商事からの出向者が約4割となっています。将来的にどうなりますか?

 「この4月1日付で、プロパー出身として初の部長が誕生した。こうした人材登用は、さらに増えて広がっていくと思う」

――国内事業の中で建材は伊藤忠丸紅鉄鋼と合弁(伊藤忠丸紅住商テクノスチール)、鋼管はメタルワンと合弁に。他品種でも、そうした事業再編の可能性を探りますか?

 「事業を伸ばしていくために意味があるのであれば、他商社と組むことは有力な選択肢だ。再編統合で効率を上げ、ポジションを上げることができるのであれば前向きに考えていく」

住友商事から金属事業を一部承継/年間売上高7000億円規模/鉄鋼中心の中核専門商社に

 住友商事グローバルメタルズ(SCGM、資本金・100億円、本社・東京都中央区晴海、社長・坂田一成氏)が4月1日から新生スタートを切った。住友商事から金属事業の一部移管を受け、年間売上高7千億円規模を持つ鉄鋼中心の専門商社に変貌を遂げた。住友商事や傘下の事業会社と連携し、今まで以上のスピード感を発揮し、多様な人材を生かして国内外で金属事業展開を強化する。金属事業を取り巻く環境の変化に柔軟に対応し得る機動的な組織を実現することにより、取引先に対して更なる付加価値を提供する「ベストチャレンジャー&ベストパートナー」として成長を目指していく。

 事業移管の背景には、前身に当たる住商スチールが2004年7月に発足して以来10年以上が経過し、鉄鋼製品の輸出入・販売、製造業・加工業など事業の知見が蓄積されたことに加え、海外事業についての実務経験を積んだ管理職層が充実してきたことがある。住友商事グループのコア事業の一つである金属事業部門の中核事業会社として更なる発展に向かう基礎が固まり、成長ステージに押し上げる態勢が整ったという認識から、住友商事グローバルメタルズが事業移管を受けるという判断に至った。

 住友商事は住友商事グローバルメタルズ、住商メタレックスとの間で会社分割に関わる吸収分割契約を履行し、住友商事グローバルメタルズに売上高7073億円(2017年3月期実績を基に計算)、住友商事グローバルメタルズの子会社となった住商メタレックスに売上高451億円(同)に相当する金属事業を移管した。

 これにより、住友商事グローバルメタルズは住友商事から(1)薄板(一部の国内向け電磁鋼板など除く)(2)自動車鋼板(3)線材・特殊鋼(4)厚板(5)建材(6)メカニカル鋼管(国内のエアバッグに関わる事業を除く)・特殊管(国内取引を除く)―の各事業の移管を受けた。同時にサミットスチール、住商メタレックス、大利根倉庫、マツダスチール、住商特殊鋼の住友商事保有株式全てと伊藤忠丸紅住商テクノスチールの株式の一部の移管も受けた。

 住友商事グローバルメタルズの完全子会社となった住商メタレックスは住友商事から(1)特殊鋼板事業部の営むステンレス事業(2)チタン・高機能材料に関わる事業(3)熱交換器用アルミ材料に関わる事業―の3事業の移管を受けた。

 今回の移管後、住友商事本体に残るのは(1)シームレス鋼管を主体とする油井管(2)大径管を主体とするラインパイプ(3)鉄道の車輪・車軸や自動車向けクランクシャフト(4)アルミ地金・製品事業―など。住友商事の他部門と特に連携が強いビジネスや、市況要素が強く本体でのリスク管理が必要な事業を中心に、本体(住友商事)に残る形とした。

サミットスチール/加工量国内最大級薄板事業の中核CC/再編で事業基盤、強固に

 サミットスチール(本社・大阪市中央区、社長・若島浩氏)は2012年10月に住商グループの主要コイルセンターだった谷本鉄鋼および住商鋼板加工が統合し、発足した。現在の拠点は営業拠点で3つ(アオイ・滋賀・福崎・大分の営業は工場と併設)、加工工場で7つあり、自動車・電機・建機・建材など幅広い産業分野に対応している。

 発足後は両社の統合・融合が進められた。2016年には道内最大規模のCCであり、同じく住商系列の北海道シャーリングをグループ化。サミットスチールだけではなく、住商グループの薄板事業の中核CCとしての役割を担うこととなった。

 また、同年には製罐工場の西条工場(広島県東広島市)を芝浦産業に譲渡するなどし、CCとして薄板事業に経営資源を集中。今年4月末には大阪地区の2工場の統合も完了する予定で、統合計画当初から描いていた姿が実現することになる。

 このほか、中国地区における3工場を会社分割により、伊藤忠丸紅鉄鋼系列の旧広島スチールセンターと統合、紅忠サミットコイルセンターを発足した。さらなる再編に踏み込むことで、より強固な事業基盤を構築していく。

 現在の加工量は年間約80万トンで、国内最大級となる。メーン仕入れ先であり、株主でもある新日鉄住金を中心に鉄鋼メーカーや流通各社と強固なパートナーシップを構築しながら、各工場を有機的に連携し、効率性を高め、取引先各社へのよりきめ細かい対応を目指していく。

坂田一成社長に聞く/「スピード感持った専門家集団目指す」

――4月から新体制となり、鉄鋼メーカーの一次商社として年商7千億円規模の取扱いを手掛ける専門商社となりました。

 「前身の住商スチール時代からこれまで、住友商事から業務受託の形でビジネスを手掛けてきた。また住友商事に出向の形で専門性の高い人材を派遣しており、海外も含めて金属事業のかなりの部分にかかわってきている。そうした意味では、やるべきことが変わるわけではないが、新しい形に変えたメリットを出さなければ意味がない。今までと同じレベルの利益では不十分であり、これまで以上の価値、利益を生み出せるような取り組みを進めていきたい」

――社長として、改めて住友商事グローバルメタルズの役割や機能をどう捉えていますか。

 「金属事業部門のコア組織として、部門のなかで中核的な役割を果たし続けることは従来と変わらない。住友商事とは一体運営を行い、双方向の人材交流を含めて、一体で運営を考えていく」

 「小回りの利く体制にしたメリットを最大限発揮し、スピーディーな経営判断を行いながら、フレキシブルに柔軟な施策を打ち出していきたい。そのために適切な権限の委譲も行う」

 「スピード感を持った専門家集団を目指すが、すでに当社にはキャリア(中途)採用者を含めてIT、経理、製造(メーカー)といった分野、あるいは海外特定地域などの各種専門家を抱えている。外国籍社員も多い。専門性を高めることで金属専門商社としての機能を強化することに加え、総合商社が持つアセット、リソース、ネットワークをフル活用する。当社内のコーポレート(本社)部門は新体制となり若干拡充したが、基本的には住友商事のコーポレート機能を活用する形だ」

「取引先に選ばれるベストパートナーに」

――外国籍社員が多いとのことですが、どういうポジションや役割を?

 「住友商事に出向する形で住友商事の海外事業展開に組み込まれており、たとえば中国では事業会社の総経理(社長)を任せているケースもある」

――部門内の一部ではあるものの、プロフィットセンターを標榜する一企業として、将来の在り姿や目指す企業像は。

 「当社は従来から『ビジョン2020年―目指す姿』として、ベストチャレンジャー&ベストパートナーという在り姿を掲げている。リスクにも果敢に挑み、取引先から選ばれる最適なベストパートナーとなることを目指している」

 「当社が手掛ける薄板、線材・特殊鋼、厚板、メカニカル鋼管、特殊管といった品種につき、住友商事から受け継いだバリューチェーンの全領域において収益力を拡大し、事業基盤を拡充していく方針だ」

住商のネットワークをフル活用

――4月からの組織体制は。

 「3月までと大きくは変わらないが、当社への移管対象外となった輸送機材やアルミ関連の本部(軽金属・輸送機金属製品本部)は廃止した。鋼板本部、自動車金属製品本部、鋼管本部の3本部体制で始動する」

――事業会社への直接出資は紅忠サミットコイルセンターを含めて国内7社です。

 「3営業本部の領域に属する事業会社は、海外も含めて移管の対象となる。海外ではコイルセンター、工具鋼の加工会社、GI(溶融亜鉛めっき)ミル事業などが対象だ。ただ海外の場合、制度面など地域の事情や個社の事情もあることから、1社1社課題を検証しながら、移管を進めていくつもりだ」

――社名はメタルですが、鉄以外の事業領域について。

 「缶材や自動車材のアルミ製品の販売は当初移管する予定だったが、当面は住友商事本体で手掛けることに決めた。その他一般用途のアルミ製品は当社子会社の住商メタレックスで販売を行っており、4月から熱交換器用アルミ材料やステンレス・チタン・高機能材料などの取引も移管を受けた」

 「当社本体や住商メタレックスは人材育成の観点から、住友商事の軽金属・輸送機金属製品本部などにも人員を出向の形で派遣しており、派遣先の組織に貢献している。そうした意味で、傘下事業会社を含めた住友商事グローバルメタルズとして、住友商事の鉄鋼以外の金属事業にも広く貢献していると考えている」

――人材育成の話が出ましたが、人材活用の考え方について。

 「専門家を育成するのは重要だが、限られた品種の担当にとどまらず、住友商事への出向なども含めて幅広い経験を積んでもらうつもりだ。住友商事の社員が当社に出向するケースも多くあるが、部門内のコア企業である当社での業務経験は重要だ。要職にも力のある社員を積極的に引き上げていきたい」

住商メタレックス/非鉄やステンレス、チタンなど/売上規模1000億円超、事業領域を拡大

 住商メタレックス(本社・東京都千代田区、社長・山脇義史氏)は、1973年に分社化された住商大阪非鉄金属販売が母体企業。アルミ押出材や伸銅品といった非鉄金属卸事業を祖業としつつ、素材販売から派生した床暖房システムや住環境部材、太陽光発電システム、建設資材といった加工品、部品、システムなどの商材を取り扱っている。直近では、電子・半導体部品、太陽光架台分野へも参入しており事業ドメインは拡大中だ。

 17年3月期の売上高は584億円。国内6つの本社・営業所で約270人が働いている。

 今回の事業再編では、(1)特殊鋼板事業部のステンレス(2)チタン・高機能材料(3)熱交換器用アルミ材料―などのビジネスを承継し、売上規模は1千億円を超えることになる。素材販売においては新たにステンレスやチタンをラインアップすることで、既存顧客への多面的なアプローチが可能になる。また高機能材料は電子・半導体事業と、熱交換器用アルミ材料は自動車材ビジネスとそれぞれシナジーが期待される。

住商特殊鋼/金属加工技術の専門家集団/商社と問屋の機能融合

 住商特殊鋼(本社・東京都千代田区、社長・山本健二氏)は商社機能と問屋機能を融合した事業形態を持つ線材・特殊鋼、ステンレス条鋼分野の中核会社。住友商事本体との一体運営によりグループ内の経営資源を生かした事業の持続的成長と企業価値の向上を図ってきた。

 金属加工技術の専門家集団によるきめ細かな加工品ビジネスの展開を成長戦略の柱の一つに据えており、2016年には取引関係のあった鋳造品・鍛造品・機械部品のファブレスメーカーへの出資も実現し、素材の選定から加工までトータルコーディネートを手掛けるワンストップソリューションプロバイダーとなった。

 住友商事グローバルメタルズの持つ顧客基盤と住商特殊鋼のノウハウや部品加工パートナー網との更なるシナジーを追及していく。

 主力物流加工拠点は関東物流加工センター(群馬県館林市)と関西物流加工センター(大阪市住之江区)で名古屋、大阪、広島、福岡にも営業拠点を持つ。東西の物流加工センターでは大ロットの精密切断や太丸切断など多岐にわたる切断ニーズに対応。マグネットとセンサーの販売においては立体自動倉庫も生かして効率的な物流体制を構築している。また停電時でも出荷業務を継続できるよう自家発電設備も持ち、顧客のBCP支援体制も整えている。

© 株式会社鉄鋼新聞社