金属行人(4月3日付)

 2018年度がスタートした。不安材料も見え隠れするが、鉄鋼業を取り巻く経営環境は総じて順調。ここ数年にはなかった、好環境下での幕開けといってもよいだろう▼2日、鉄鋼業界の多くの企業で入社式があった。主役はもちろん、社会人としてのスタートを切った新入社員だが、新社会人を前に語る経営トップのメッセージも興味深い▼社会人の心構えを説く内容を見ると、そこにはトップ自身の経験に裏打ちされた重要なメッセージが盛り込まれている。もちろん、反省を込めて語る場合もあるだろう▼足元の経営環境にも端的に触れており、その時代を映す鏡ともなっている。今年のキーワードはさしずめ「通商摩擦」だろうか。電気自動車(EV)に絡めてメガトレンドへの対応を指摘する訓示もあった▼新日鉄住金の進藤孝生社長は、変化への対応を強調する一方で、「鉄は今後も素材の主役であり続ける」と力強く語った。それは鉄鋼業の扉をたたいた新社会人にとって、最高のエールといってよい▼47年前の入社式。旧新日鉄の稲山嘉寛社長(当時)は、新日鉄1期生を前に「鉄は国の礎石」と語った。鉄鋼業はその後、幾多の荒波を受けたが、日本の基幹産業としての位置付けは今も変わっていない。

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