北朝鮮を信じないボルトン氏が披露したジョーク

By 太田清

米メリーランド州での集会で演説するボルトン元国連大使=2017年2月24日(AP=共同)

 トランプ米大統領が国際協調派のマクマスター大統領補佐官に替え、ネオコン(新保守主義者)としてイラク戦争を強力に推し進めたタカ派、ジョン・ボルトン元国連大使(69)を起用すると発表して以来、ボルトン氏への関心が急速に高まっている。北朝鮮情勢を巡って5月には米朝首脳会談も予定される中、大統領補佐官は国務長官と並びトランプ氏の外交政策に大きな影響を与えることが想定されるからだ。そのボルトン氏の発言を追ってみると、同氏が北朝鮮の最近の融和的な動きを全く信用していないことが浮かび上がってくる。

 米保守派の論客、リンゼー・グラム上院議員(共和党)は1日放送のFOXニュースで、最近、ボルトン氏と夕食をともにしたことを明らかにした上で、ボルトン氏が「(北朝鮮にとって)一連の交渉は(核・ミサイル開発のための)時間稼ぎの手段にすぎない」との見方を示したと語った。 

 ボルトン氏と言えば、ブッシュ(子)政権で軍備管理・国際安全保障担当の国務次官に任命され、イラク戦争推進派として開戦への流れをつくったことで知られる。北朝鮮に対しては当時から批判的で、故金正日総書記を「凶悪な独裁者」と批判、北朝鮮で暮らすことは「地獄の悪夢」などと発言したことから、北朝鮮から「人間のくず」と反撃されたこともある。その後国連大使となったが、北朝鮮とイランに対し歯に衣着せない批判を続けた。 

 一部では、ボルトン氏の過激な外交姿勢に警戒感を示す人もいる。英紙ガーディアン(電子版)によると、科学者らによる非政府組織(NGO)「米国科学者連盟」の核兵器問題専門家、アダム・マウント氏は、ボルトン氏について「米国で最も過激で無責任で危険な発言者の一人」と評した。 

 ボルトン氏は、保守派の放送局として知られるFOXニュースの論客としてたびたび出演してきたほか、保守系シンクタンクであるアメリカン・エンタープライズ・インスティチュートの上級研究員を務めてきた。また、米ブルームバーグによると、トランプ大統領就任後は大統領に助言を与えるため、しばしばホワイトハウスを訪問。最近では、マクマスター大統領補佐官更迭をホワイトハウスに働き掛けてきたという。 

 北朝鮮への軍事行動を巡っては、2月の米紙ウォールストリートジャーナルへの署名記事で、先制攻撃は「全く合法的」と主張し、北朝鮮からの攻撃がなくても米国は武力行使できるとの立場を強調。トランプ氏が米朝首脳会談を行う考えを明らかにしたことを受け、FOXニュースでコメントを求められたボルトン氏は「金正恩体制の打倒が必要」との考えを繰り返した上で、「北朝鮮がうそを言っていることを、どうやって知ることができると思いますか。彼らのくちびるが動いていることで分かる」との〝お好み〟のジョークを披露した。北朝鮮がしゃべることはすべて、うそだという意味だ。ボルトン氏の就任予定は今月9日。米国の対北朝鮮政策は大きく変わるのだろうか。 (共同通信=太田清)

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