【高校野球】重圧かかる場面で“超攻撃的采配”も 大阪桐蔭の逆転劇引き寄せた名将の決断 

第90回記念選抜高校野球、大会11日目の結果

今大会初めてリードを許すも9回同点、延長12回サヨナラ勝ち

 第90回記念選抜高校野球は3日、大会11日目を迎え準決勝第2試合は大阪桐蔭(大阪)が3-2で三重(三重)を下し決勝進出を決めた。大阪桐蔭が今大会初めてリードを奪われ、延長12回の死闘となったこの一戦を沖縄・興南高校で春夏通算6度の甲子園出場を果たし、京都大学などでも監督を務めた比屋根吉信氏(66)に解説してもらった。 

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 大阪桐蔭は今大会一番苦しんだ試合でもあったが、接戦をものしてまた一段と自信を付けた一戦となった。2点を先制され、初めて追う展開となったが、そこは百戦錬磨の西谷監督。焦ることなくジワジワと三重を追い込んでいった。 

 大きかったポイントは継投のタイミングだ。エースの柿木が3回に2点を失った場面で、三重打線のタイミングが少しづつ合ってきた。それを見た西谷監督は5回から躊躇することなく根尾にスイッチした。ここの決断が勝利につながったと言っても過言でもない。 

 そして攻撃面での采配は土壇場に追い込まれた9回だ。先頭の根尾が四球で出塁し同点のランナーが出たが、続く山田がバント失敗。そこで怯むことなく続く石川にはエンドランのサインを出し、選手も見事に応えた、ここで流れを止めることなく、一、二塁から再びエンドランで同点に追いついた。

プレッシャーがかかる場面で“超攻撃的な采配”

 プレッシャーがかかる9回1点差の場面で超攻撃的な采配を見せた西谷監督は見事だった。甲子園での勝ち方を知っている監督と、実戦を想定した練習で鍛えられた選手だからこそ9回の同点劇が生まれた。準々決勝の花巻東戦では17安打19点を奪い、今日の試合は少し雑になるかと思ったが、全くその心配はなかった。 

 5回から救援した根尾もこの日は丁寧な投球を見せていた。前回登板は9四球と制球力に課題を残していたが、それをしっかりと修正。勝負所では三振を奪い、決定打を許さなかった。8回も先頭に3ボールノーストライクから三振を奪った。普通なら崩れるところだが、顔色一つ変えずピンチとは思わせない雰囲気を作っている。投打にわたってセンスを感じさせる選手だ。 

 一方、三重は優勝候補の大阪桐蔭をあと一歩まで追い詰めた。背番号「10」の定本は球速こそ130キロ台だったがスピードガン表示以上に球に勢いがあり、そして重たい球質で強打の大阪桐蔭打線を抑え込んだ。この敗戦は夏に向けて大きな収穫となったに違いない。楽しみなチームが一つ増えたといえる。 

 決勝戦は強打の智弁和歌山と、どんな試合にも対応できる大阪桐蔭の対戦となった。柿木、根尾、横川、森本と4枚の投手がいる大阪桐蔭が有利とみる。だが、智弁和歌山も逆転に次ぐ逆転でここまで勝ち上がってきており、勢いがある。打ち負けることなく、どんな状況になっても打ち勝つことができれば勝機が見えてくるだろう。共に好ゲームを見せてきただけに興味深い決勝戦になるだろう。 

〇比屋根吉信 (ひやね・よしのぶ) 

1951年9月19日、兵庫県尼崎市出身。66歳。報徳学園高から大阪体育大に進学。卒業後は西濃運輸で日本選手権にも出場。1976年に沖縄・興南高の監督に就任。仲田幸司、デニー友利ら多くのプロ野球選手を輩出。監督生活10年間で春夏通算6度、甲子園に導き1980年の選手権大会ではベスト8入りするなど同校を強豪校に作り上げた。その後は社会人野球・阿部企業、熊本・有明高の監督を務める。2010年から12年まで関西学生野球リーグの京都大学の監督を務め、田中英祐(元ロッテ)を育てた。

(Full-Count編集部)

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